[携帯モード] [URL送信]

幻想詩編
-紅-
幼き刃を身にかざし

風を友に禍つひ霊は

ただ ただ、憂い

出でし野山に火を放つ


亡き者の為に施す印は

何れの約束と果たすのだろうか

その瞳は仄暗く

私の昨日に向けられる


私の姿は映らない

喜びを忘れた

悲しい悲しい 独り墓地

無に踏み出す

暗がりが怖い


割れた杯は戻らず

葡萄酒に溺れる

狼は腹を鳴らし

赤い牙を覗かせる


流れに逆らう者は流され

船に乗る者は沈む

此処は紅い海

黒い太陽が沈む


我 魂魄の鎖をもって鳥を討つ

さすれば 咆哮する音をもって奏で

冷血に身を裂いて空を染める

これを八重に重ねるとする


胡蝶の夢は続かない

いずれは戻る現の夢

地に足を空に手を

やがては終わる現の夢

私は帰る夢の島

貴方が溺れた紅い海

私はそっと 船を流す

紅い果てを見つめて


されども、もう…


月は、くれない




[←前][次→]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!