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04



「うぅ…ビックリしたアル。ごめんヨ、おじさん。うち初めてアメリカ来たもんだからはしゃぎすぎてたネ」

「おーそうか、そうか。つー事はなに、お宅らあの客船に乗ってきたわけ?」

「ええ、まぁ」


答えた優に、エドガーは遠くにある船体を眺めながら、成る程ねぇ、と呟いて紫煙を吐いた。
その煙がまたもやシンに降りかかって、耐えきれずシンは口を開いた。


「おい、あんた。さっきから煙こっち来てんだよ。煙たいからやめろ」

「ん?…おーそいつは悪かったな、異端審問官様」


揶揄の込められた呼び方にシンの碧眼が不快げに眇められる。
エドガーは続けた。


「遠路遥々ご苦労なこった。異端審問官様がこんな国に何の用なわけ?アジアン二人に『鋼鉄の処女』の団長様まで連れて」

「あら、ご存知ですの?」


声を上げたアナスタシアに、当然だろ、とエドガーは返す。


「格好見りゃ、分かるっつの。──で?何の用事だってんだ?薔薇十字団から合衆国の現状でも探ってこいって言われたのか?」

「薔薇十字団はもう無い。崩壊した」


シンは言い放つ。


「どうせもう情報入ってるんだろ。わざわざ言うんじゃねぇ、胸糞悪い」

「ははっ、そりゃ悪かった」


白衣のポケットから携帯灰皿を取り出し、エドガーは煙草を押し付けた。


「悪かったな。上の連中から命令を言付かっててね、もしあの客船が怪しい船舶だったら上司に連絡入れないといけねぇんだよ」


もう一本煙草を取り出し、エドガーは客船を見上げた。


「まっ、合衆国に喧嘩売りに来たわけじゃねぇんならいいわ」

「まぁそんな簡単に…。詳しく調べなくてもいいんですの?」

「いーんだよ。見たら分かるわ」

「当然アル!うちらの船、ただ動力室が破損しただけヨ!」

「そりゃまた災難だったなぁ」


ふーっと、今度は誰にも当たらないように紫煙を吐き出す。
その時、白衣の中からエドガーの携帯が鳴って、彼はと一言詫びを告げると通話ボタンを押した。


「もしもし。…あぁ所長、どーしたんスか」


何を話しているのか分からないが、エドガーは神妙な面持ちで頷きながら聞き、ちらりと優達を見た。


「…いや、そんな連中いませんよ。…はい、……わーってますって。あ、あと所長。船舶自体も別に怪しいとこはないっスよ。はい、はい。つーわけで、俺今日はあがりますから。じゃあ、お疲れさん」


通話口越しに喚く声が優達にまで聞こえたが、エドガーはそしらぬ顔で電源ボタンを押して通話を終了させた。


「…あの、何の話ですか?」

「んー?」


尋ねた優に、エドガーは紫煙をくゆらせながら周囲を見回した。


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