05
「帰って」
ただ強く言い放った。
「帰って、今すぐ。知らない事も多いままあたしはあんた達と一緒にいたくない」
「だったらなに?全部思い出したら、女神様はあたしらと共に在る?」
「考える猶予をちょうだい。全部それから決めるから」
「ふうん…」
面白がるようにルカは菫色の瞳を細める。
「まっ、いいよ。女神様の命令なら聞いてあげるから」
そう言い、ルカは神器を分離させると軽い身のこなしで窓枠に飛び乗った。
「じゃあね、女神様」
光に包まれつつルカはそう言った。
「今度会う時までに思い出していなかったら、あたし容赦しないからね」
「………」
黙ったままの優に、ルカは白々しく手を振って光と共に消えていった。
「か、帰ったアル…」
安堵をまじえてメイファが呟くのを聞きながら、優は己の神器を分離させた。
「優…始祖と共に行きますの?」
不安げに見つめてきたアナスタシアに優は、まさか、と言って笑った。
「行かないよ。ああでも言わないとこの場が収まらなかったでしょ?」
「ですけど彼女言ってましたわ。容赦しないって…」
「気にする必要ないだろ」
意に介した風もなくシンもそう言った。
「あいつはハナから容赦するつもりなんてない。ああ言って決意を鈍らせようとしてる事なんて丸分かりだ」
「……」
「気にすんな、優」
シンの声に顔を上げると、彼の碧眼は真っ直ぐ自分を見つめていた。
「──守るから。俺がちゃんと」
その言葉に、優は目をぱちくりさせ、そしてみるみるうちに顔を真っ赤にさせた。
停止した優の様子に、シンはハッとして慌てて弁明しようとしたが、まぁ、と感慨深げに呟いたアナスタシアの声によってそれは遮られた。
「素晴らしいですわ、シン。立派な殿方になりますわ」
「?どういう事アルか、アナスタシア。意味分かんないアル」
「それはね、メイファ──」
「か、勘違いすんな!」
シンは声を荒げる。
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