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03


「…ええ存じています、あなたの事は誰よりも誰よりも。私が存在するのは全てあなたの為。あなたこそが私の世界なのです…。それは今も昔の永久に変わる事はない」


強く抱き寄せられ、優は驚いたものの突き飛ばす事はしなかった。

抱き締めるイザヤの腕に力がこもる。










「ずっとお会いしたかった…。我らの女神──…“奇跡の紅”…──」










「………」



──ああ、やっぱり。



イザヤの肩に顔を押し付けたまま、彼の体温を感じながら優は頭の片隅でぼんやりとそんな事を考えた。

驚きはしなかった。
不思議と鼓動が穏やかになる。
触れ合った箇所から感じる熱が身体中に染み渡り、自身の奥底に眠る力を落ち着かせていく。


「………イザヤ…」


自然に唇がそう彼の名前を紡いでいた。
その声に優を抱き締める腕に更に力がこもった。


「………永かった。ずっとずっとあなたの影を追い求めて私は……。女神、これで我々は解き放たれる…我々の願いがようやく叶う時がくるのです」

「…ま、待って…!」


体を引き剥がし、優は困惑の色を滲ませているイザヤの瞳を見た。


「女神……?」

「…まだ、よく分からない事だらけだよ。あたし達の願いってなに?あたしは一体なんなの?あなたは一体──」

「まだ、よく思い出せませんか…?」


そっとイザヤの手が頬を撫でる。


「私はイザヤ。創世記より女神と共に在った始祖が一人」


そして、と、強い光をたたえたイザヤの碧眼が真っ直ぐに優を見つめた。


「女神。あなたは我らの道標でもあり、母なる創造神であり、希望そのもの。あの時、我々を虐げた人類に奪われた地上をこの手に取り戻す事の出来る“奇跡の紅”なのです」

「………人類に奪われた地上…?」

「ええ。ですが、あなたは人を愛した。あんなにも虐げられ、あんな屈辱をその身に受けたというのに…。なのにあなたは人を愛し、何度も何度も転生を繰り返した」


ゆっくりとイザヤの声が脳を浸透していく。


「あなたは様々な時代を生き、人類を見定めようと人に紛れて暮らした。その結果どうですか?人はあなたが愛するに値する生き物でしたか?」

「………わ、わからないよ……」


やっとの思いで優はそう声を絞り出した。
心の奥でもやもやとしたものが渦巻く。


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あきゅろす。
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