[携帯モード] [URL送信]
02


部屋の中は四隅に置かれたランプにより明るい。
殺風景な室内には戸棚と中央に金属製の台があるだけで、他にこれといった調度品は無いようだ。


「どうかしましたか?」


立ち竦んだままの優にイザヤは穏やかに声をかける。
その瞬間、感じていたあの感覚が更に酷くなり、抗いきれず崩れ落ちた優は必死に呼吸を整えようとしたが、呼吸は不自然に荒くなるばかりであった。


「優?」


そんな優を目の当たりにしてもイザヤは一切動じない。
戦慄くように優は息をついた。


「…っ、…気持ち悪い…」


そう言った瞬間、ランプの灯りに照らされたイザヤの瞳に強い光が宿ったが、崩れ落ちた優からは決してその変化を見る事は出来なかった。


「…それはいけませんね。さあどうぞ。立てますか?」


手が差し伸べられるが、優はそれをとろうとはせず、震える膝を叱咤してやっとの思いで立ち上がった。
粗方呼吸が落ち着いていき、優は壁に背を預けて肩で息をしながらイザヤを見据えた。


「大丈夫ですか?」


生唾を呑み込み、戦慄くように頷く。


「それはよかった。さあ、こちらにどうぞ」


イザヤに手を引かれ、優は中央にある台の前に辿り着く。
困惑の表情を浮かべている優にイザヤは微笑むと、優をその台に座らせた。


「さて。では早速本題へと入りましょうか」


その言葉に優は身を強張らせた。


「優。あなたは“真実”が知りたいんですよね?」

「分かってるくせにそんな事訊かないで」

「これは手厳しい」


イザヤの微笑みが深くなる。


「ですが、分かってるくせにと言うのは私のセリフでもあります。加護優。あなたも本当は全て理解しているのでしょう?」


優の心臓が大きく跳ね上がる。


「ただ、あなたはそれを認めたくない──いや、認めたくない、というのは少々語弊がありますね。認められない、と言った方が正しいのでしょうか」

「…………」

「だからこうしてあなたは私のところに来た。シンにもメイファにも黙って。──ですね?」

「…あなたは、あたしの事を知ってるみたいだから」


そうなのだ。
図書館で初めてまともに会話をした時から、イザヤは意味深な発言ばかりを残している。

見上げてくる優にイザヤは嬉しげに微笑んだ。


[*前へ][次へ#]

2/8ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!