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02



「ああ。そう言えば、先程アジアンの女の子とすれ違いましたよ」

「優達か?」

「優?ああ、彼女はそういうんですか?フランスにアジアンだなんて珍しいなと思ったのですけど…シンのお知り合いですか?」

「……まあ、そんな感じ、かな」


曖昧な返事を返したシンだったが、イザヤはさほど気に止めた風もなかった。


「では、私はこれで失礼しますね」


仰々しく頭を下げ、イザヤはそれきり振り返る事なく階段を上がっていった。

シンも振り返ると、図書館に向かったであろう少女達を追い掛けるべく通路の奥へと消えていった。



◇◇◇



「優、何やってるアルか?」


広いスペース内に設置されてある机の上にだらしなく顎を乗せ、メイファは優の後ろ姿を見た。
利用客があまりいない時間帯なのだろうか、訪れている人物は優とメイファしかいない。

受付の女性は入ってきた二人のアジアンの少女を見ると、じろじろと奇異なものを見るような視線を送ってきたが、無視を決め込んで優はずらりと本の連なった棚を仰ぎ見ていた。


「だから言ったのに。メイファ退屈なんだったら外出てていいよ?」

「出てもやる事ないもん」

「メイファ観光したいんだよね。ごめんね、あたしの用事終わったら一緒に行くから」

「優はなに調べてるアルか?」

「んー?」


優は背伸びをして、高いところにあった本を手に取った。


「ちょっとね、色々」


ぱらぱらとページを捲りながら答えるが、実際優自身も何がしたいのか分からない。

ただ──何か引っ掛かる。
理由はそれだけ。


「うちも手伝うアル!」


横からそう声が聞こえ、メイファは台に登ると一生懸命手を伸ばして、優の持っている本と同じジャンルの本を取っていた。


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