03 「メイファ。読めるの?」 「チャイニーズは勉強熱心アル!」 「へーえ。初耳」 「……信じてないネ」 「冗談、冗談。信じてるって」 笑って返し、優は立ったまま文字の羅列に目を通した。 『世界の宗教的世界観』 『旧世紀の科学戦争』 『世界再建』 『新約聖書』 「………」 『西欧諸国と科学技術推進国』 『禁忌の技術』 『魔法の論理』 「……?」 はたと、優のページを捲る指が止まった。 『奇跡の紅』 その章のタイトルが強烈に焼き付き、優は無言のまま文字の羅列に目を通した。 『奇跡の紅。それは万物の造り主。世界を創造した女神。神器を駆使し、だがその圧倒的な力故に人間達から異端と見なされ、始祖と共に惨殺された悲劇の乙女』 「………」 『女神はそれでも人と世界を愛し続けた。死しても尚復活を遂げ、幾度も転生を繰り返し、大いなる時の流れの中で女神は万物を愛し続けた。自分の愛した世界の繁栄を、平和を、安寧をただただ祈って──』 優はぱらりとページを捲る。 遠くで図書館の扉が開いた音が聞こえた。 『始祖の中で、常に女神と共に在った者がいた。始祖の中で女神に最も近く、最も庇護を受け、そして最も絶対的な忠誠を誓った者が』 こつこつと足音が近付いてくる。 『女神を最も愛し、そして人類を最も忌み嫌った人物。名は──』 「──何をしているんですか?」 「───っ!!!」 びくりと優の肩が跳ね上がる。 「あ……」 ばくばくと早鐘を打つ心音を聞きながら、振り返った優は呆気に取られた。 そこにいたのはあの時廊下でぶつかった青年──イザヤであった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |