小連載
8
拝啓、最近江戸の娘さんと良い仲になったという弟へ。
今私は京都ではなく中国地方の西端で手紙を書いている。
村を出立したのは半年前だったな。
旅をしていると時間の過ぎるのが早い。
野を越え山を越え、たどり着いたこの地域はもうすぐ冬になるというのにまだまだ温かい。
前の手紙に書いた、探し子を保護してくれたという人物を追い、こんなところまで来てしまった。
報告なのだが、先日旅は終わった。
どうにか無事を確認しようと訪れたのは、長州の萩という場所だ。
先日、探し子を見てきたよ。
ちょっと面倒くさがりな所がある、元気な男の子に成長していた。
村塾に通っていると聞いたのでこっそりのぞいてきたのだが、見た限り居眠りばかりしていたな。
同じぐらいの年頃の友達と口喧嘩しいているのも見かけたが、活発というよりはずいぶんと口の回る子だ。
だけど面倒臭がりながらも年下の子供を世話したり、思いやりのある優しい子だった。
あの子は良い人に拾われていた。
その人は村塾の先生をしている御人で、あの子には内緒で少し話もさせてもらっよ。
彼はあの子に剣の使い方を教えようとしている。
会うまでは心配事もあったが、杞憂だった。
彼らを見て、私はあの子を村に連れて行かないことにした。
あの子と彼が本当の血の繋がった家族に見えたんだ。
とても幸せそうだった。
あの子は彼の所なら大丈夫だ。
きっと彼なら子供を上手に育ててくれる。
彼らを引き離すことこそ馬鹿のすることだ。
声だけでもかけようかと思ったが、やめておいた。
あの子を村に連れて帰れないことは、あの人たちには私から謝罪しておくよ。
あのまま彼の元でのびのび育つことがきっとあの子の幸せだと思ったのだ、許してくれ。
色々と事後承諾になってしまったが、そう言う事で旅は終わりだ。
今から帰る。
追伸。式の日取りは決まったのか?
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