リコリス
23
原作でも、銀髪の彼は泳ぎが得意ではなかったはずだ。
たしか金魂編で緑髪のアンドロイドにそんな具合の台詞を貰っていた。
銀時がこの日に泳ぎを覚えたら何かしらの影響を与えるのだろうか、と白波は一瞬思うがそれもすぐに露散した。
ある程度のスキルは持ってて邪魔になることは無いだろう。
さてなんと声をかけて始めようか。
しぶしぶといった銀時を横目に、自分も磯着を着込む。
海育ちだ。子供に泳ぎを教えた事なら何度もある。
しかし。
海にすごす子供は、年上たちが海で遊ぶのを見て自分から水に入ってくるのだ。
水に入る事自体を嫌がる子供はなかなかいない。
水を怖がる気持ちよりも好奇心が勝つ年頃から海が遊び場なのだから。
さて、最初にかけるべき台詞は何か。
――さあ行きますよー!とりあえず飛び込んで体で覚えましょう!
キャラじゃない。
――いつ何時、水の事故に遭遇するか判らないので、水の中で前に進む程度の力はつけておきましょうか
何かが違う。
――地球の表面積の七割は水。数多の星々でもここまで水に恵まれた星もありません、地球人なら海に入っておきましょう
何言ってんだ。
そんなことをぐるぐると考えた白波だったが、結局一番手っ取り早い方法をとった。
「私、松陽さんのお誘いで来月京都へ入るんですよね。十中八九松陽さんに連れられてまたここを訪ねることになると思います」
「ふーん」
「お土産買ってこようと思うんですね」
「うん」
「銀時君が以内に同い年の塾生さんたちより長い距離を泳げるようになったら、江戸限定いちごミルク味のキャラメルコーン10袋買ってきてあげようと思います。頑張ってください」
「頑張ります白波先生」
「君に先生と呼ばれることになろうとは思いませんでした」
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