見える先に向かうだけ!
瞬間移動は体力をギリギリまで消耗します
《さあ、出ていくタイミングはどうする。あまり早すぎると捕まえることも出来ねぇ》
祐樹が楓に伝える。
声を出すとバレるかもしれないから、一応。
(愛美ちゃんが気絶する寸前くらいでどうでしょう。上手くいけば上手くいくと思います)
《そりゃそうだろ…》
だが楓の言ったタイミングがベストかもしれない。
犯行直前の方が止めるときに言い逃れさせにくいから。
とりあえず
《ここからビデオを回しておきます》
プール全体が映るように柵に引っかけ、適当に固定した後出るタイミングをはかる。
『やあ』
《楓、俺が合図したら一緒にテレポートするぞ》
(わかりました)
少年たちと森口の娘はまだ話していた。
『ほら、開けてみてよ。中に良いものが入ってるよ』
初めに愛美に声をかけた少年とは別の少年の声がした。
《今だッ!》
合図だ。
飛ばす場所は予め確認しておいた。
楓はすぐに目を瞑りその場所へ飛んだ。
「ホントだよ、だから開けてみ…ぐぼぁ!」
直也が話している途中で変な声をあげる。
何故かって?そりゃあ…
「楓、お前なぁ…」
飛んだ楓が直也の真上に現れたからだ。
「い、いきなりなに…!」
「お、お前ら誰だ!」
威勢の良い方は渡辺修哉だろうか、祐樹達を怖いくらい睨んでいる。
「誰かって?通りすがりの救世主Aだよ」
「同じくBです」
楓は直也の上から降りながら言った。
なんか疲れているらしい、祐樹に頼んで背負ってもらった。
「…よいしょっと。お前らここで何してんだ」
楓を背負いながら言う。
していたことがあれなだけに、彼らは答えない。
「おい、何してたんだって聞いてんだ、答えねぇか」
祐樹の声がどんどん低い声になっていく。
っていうか、少しブカブカの私服を着て学校のプールに現れた祐樹達の方が何をしているんだ。
「とりあえず」
愛美に近寄り、愛美からポシェットを取り上げる。
「わっ!返してよお兄ちゃん!」
当然愛美はそう言う。
「ちょっと待ってな」
そう言って祐樹はポシェットを開き、中の器具を全部ひっくり返し、飴玉を入れた後愛美に返した。
その様子を見ていた修哉は驚いたような顔をした。
「お、おい…なぜそれを開ける…」
大分自信作だったらしい、祐樹が作業中何の反応も起こさなかったことに呆然としていた。
「ああ、そういやこれで気絶するんだっけ?この子」
「気絶じゃない!死ぬんだ!」
言い返した後修哉は急いで口を手で塞いだ。
「わ、渡辺君、死ぬって…どういうことなの?」
さっきの発言を聞いて直也は修哉に訊ねた。
彼はまだ、この段階ではいたずら程度にしか思っていなかったはずなのだから。
「そ、それは…」
言い返しにくい、いや、言い逃れしにくい状態だ。
直也は薄々気付き始めていた。
初めから修哉は愛美を殺す気だった、と。
「わ、渡辺君…?」
「ちんたらちんたらめんどくせぇ、俺が代弁してやるよ」
祐樹は口を開いた。
「渡辺はこの装置でその子を殺す気だった、それだけだ。お前は死んだその子を誰に殺されたのかを誰かに言えばいい、言うなれば証人みたいなもんさ」
それを聞いて直也も驚いて固まってしまった。
(今の下村なら大丈夫、狂気に走ることはないだろう。だったら問題は一つだけ)
ちらっと二人を見ながら考える。
(渡辺修哉だけ、か)
初めからそうなのだが。
彼を叩けば直也も自動的に落ちるだろう。
「おい渡辺、さっきの俺の言葉、間違ってるところがあるなら修正しても良いぞ」
祐樹は挑発のつもりで渡辺にいった。
だが、それは逆効果だったらしい。
「ハ、アハハハハハハハハハ!そうだよ!俺は初めからそいつを殺すつもりだったのさ!だからどうした!まだ殺していない!お前達は俺をどうこうすることができないのさ!」
完全に開き直っている。
祐樹は呆れた目で狂ったように笑う修哉を見ていた。
「はぁ……どうしてこの手の犯罪者は開き直った後笑うんだろうねぇ…」
みたいに。

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あきゅろす。
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