見える先に向かうだけ!
まぶしいとか輝く、などの単語を聞くとハゲた先生に視線が集まる
楓たちは簡単に銀に現在の状況を説明した。
「……フン」
銀は適当に頭の中でまとめる。
そして確認をする。
「綾戸のヤローが今誰か………超能力者に拐われていて、その場所がこの学校だ。ってか」
「うん、そういうこと」
真奈美が頷く。
「つーかよォ。田代と高梨にはもう話したってことだよな?」
「なにを?」
銀の疑問に玲は訊ね返す。
「超能力だのゴーレムだの、そんなことを」
銀は頭の中にイロノのことを思い浮かべる。
祐樹が嫌がった彼女らに事情を話すことをもうしてしまったのかが気になったのだ。
「ああ、うん。協力してもらうのに事情を話さないのは失礼だしね」
本当は隠すことに罪悪感を感じただけである。
「ふーん……」
興味あるのかないのか、銀はそれだけ答えた。
「ふーん、で話を終わらせないでよ!綾戸を探さないといけないの!」
真奈美が銀にそう言う。
危ない危ない。
危うく銀に話を流されるところだった。
「ああ…うーん…………。待ってろ、適当に話つけてきてやらァ」
そういうと彼は校舎に入るために南門の方へ行った。
「ついでだし僕らも南門の方へ行っとこうか」


―しばらくして―
「ほら、いいぞ。中に入れ」
銀は校舎から出てくると生徒と部外者にそう言った。
「お、俺たちもいいんですか?」
若干不安なため茂が訊ねる。
「あーもーいいからいいから、さっさと入れ」
「は、はい。失礼します…」

「で、真奈美。どこから探す?」
紗耶が真奈美にそう訊ねる。
入れたのはいいがどこから探すかは決めてはいなかった。
「なんだお前ら決めてねーのかよ…。どーでもいいけど職員室と校長室の周辺には近付かない方がいいぞ。つーか校長と教頭に気をつけろ」
「なにしたんですか先生………」
橘がボソッと呟くが銀は知らぬ振りで向こうを向いた。
その間にも真奈美はケータイを見つめてこう言う。
「まず何組かに手分けして探そうか。詳しい場所については載ってないから自分たちで探すしかないみたい」
「そうか…なら適当にわけようか」
玲がそう言い、皆は何人かの組に分かれて探すことにした。

高梨、佐藤、橘チーム
「まずどこから探す?高梨さん」
橘が紗耶にそう訊ねる。
茂は学校のことを全く知らないので付いていくだけだ。
「旧校舎と新校舎はあの二組が探してくれるだろうから、私たちは外を探そうかな」
「外………例えば?」
紗耶の提案に茂が聞き返す。
お前は黙って付いてきとけよな。
「プールとか食堂とか体育館とか……。まあ校舎以外だね」
「なるほど………」
つーわけで。


体育館
「さってと…」
橘がまず入った。
夏の外気と違い、体育館の中はひんやりと涼しかった。
普通の靴のまま入るのはあれなので靴は脱いであるおかげで余計に涼しい。
「まずは舞台とかかな?」
「俺は倉庫見てくるよ」
「俺は………まあ何があるかわからないから適当に」
3人バラバラに探すらしい。
茂はなにがあるかわからないので中を散策してみることにした。
まず、紗耶が舞台に上る。
「でも舞台って何にもないよね…」
とりあえず辺りを見てまわる。
「うーん………」
やはりなにもない。
カーテンの裏や教壇の下。
垂れ幕を下ろしてみたりもする。
「何にもないねー………」
そもそも舞台の上になにがあるというのか。
地下室とかに祐樹を監禁しているとか?
それなら舞台の下のパイプ椅子を入れているところに………。
「あ、そっか!」
紗耶は考えを巡らせて気づく。
下だ。
下を探していない。
そして彼女は舞台から降りる。
「よいしょ………と」
重い引き……引きなんて言うんだろ。
まあ、舞台の下から椅子を取り出す。
まとめて乗り物に乗せているのが五列ほどあるため、彼女はそれを全部出してみた。
「よし。調べよう」
さっそく中に潜り込んでみる。
中は思ったよりも埃っぽくなかった。
(ずっと放置してるから埃がたくさんだと思ったけど………最近誰かが掃除したとか?)
あるかもしれない可能性は疑っておく。
紗耶はさらに奥に入ってみた。
しかし奥は暗くてなにも見えない。
(ちょっと暗すぎるな………演劇部とかが倉庫に懐中電灯置いてないかな)
なぜそう考えたか?
演劇部などは幕が下りてる間は明かりを消している。
そのためバミリなどを探すときは、懐中電灯を使ったりして舞台の準備を整えるのだ。
「橘くんがいたよね。行ってみよー」


二階、操作室
「これでライトアップとか音響とかいじれんのか………」
カチッカチッと電気を付けたり消したりしてみる。
「このスイッチはなんだ?」
何にも書いていない、1つだけ音響でもなし、ライト手もなく幕でもない黒いスイッチがあった。
茂はそれを押してみる。
「…………」
どこにもなにも変化がない。
何度か切り替えてみるが虚しく音が響くだけだった。
「なんだよ」
なにもなかったことがつまらなかったので茂はそれを放置して下に降りることにした。
そう。
スイッチはオンのまま。


倉庫
橘は倉庫の中で大暴れしていた。

ガラガラガラ!ガッシャーン!

なんてただ色々ひっくり返していただけなのだが。
「あーまた倒れてきた………」
先ほどから段ボールの山を直しては倒れ、また直してはまた倒れを繰り返していた。
何度丁寧に直しても絶対に倒れるのだ。
「……はぁ」
「橘くんいるー?」
と、その時紗耶がやって来た。
彼女は一瞬そこら中に散らばっている段ボールを見て橘に言う。
「あららー。ぐっちゃぐちゃだねー」
「そうなんだよ………。で、どうしたの?」
段ボールのせいで忘れていた本来の用事を思い出す。
「あ、懐中電灯ないかな?ちょっと探したいところが真っ暗でね」
「ああ、それなら………」
さっき見つけていたのだろうか。
橘は棚の奥に手を伸ばして懐中電灯を取り出した。
「はいこれ。普通に点くよ。替えの電池も使えるみたいだし」
そう言って懐中電灯と電池を紗耶に渡す。
「ありがとう橘くん。ここ一緒に片付けるの手伝うよ」
と、一瞬倉庫の電気が消えた。
「……あれ?」
「茂が何かしたのかな」
橘は適当にそう言って片付けを始める。
段ボールを拾って違う段ボールの上にのせる。
「あ、橘くん違うよ!」
「え、違う?」
その作業をしているときに紗耶が橘に声をかける。
彼がそちらを振り向くと段ボール以外が綺麗に片付いて、そこに紗耶がいた。
(なんという早業………)
「橘くん。まず段ボールの重いのを下にいくつかならべて、それで大きいのから順に乗せるんだよ。それから……」
彼女は説明をしつつ段ボールを積んでいく。
と、橘が少し紗耶の話を聞いているともう全部段ボールが積まれていた。
「はやっ!」
「お片付けだけは昔から得意なんだ〜」
そう言って彼女はにこやかに笑った。
いくらなんでも早すぎる、と橘は思う。
これはこれで一種の能力なんじゃないかとも思った。

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あきゅろす。
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