見える先に向かうだけ!
書き始めたのが中三って…もう高二だぜ?
夏休みに入ってから数日たった。
「…………祐樹」
紗耶は既に異変に気づいている。
今日はどんよりとした、気持ちの落ち込む天気だ。
それも乗じて紗耶の気分は最悪だった。
焦りと恐怖が彼女を襲っている。
(一旦落ち着かないと………)
そんな自分の気持ちに気づき、目をつむって深呼吸をする。
「………………よし」
とりあえず今すべきことを考える。
(まず真奈美に助けてもらわないと…)
こういうとき………なんて滅多にないが、いつも頼るのは真奈美だ。
彼女の情報収集能力は頼りになる。
と、言うわけで。

「呼ばれました」
「来ていただきました」
真奈美が紗耶の部屋にやってきた。
既に彼女に事情は話してある。
「紗耶の嫌な予感、は当たるからねー。良い予感もだけどね」
真奈美は苦笑いしながら言った。
「嫌な予感で綾戸のことが浮かんだのと、今あいつがどこにいるか誰も知らないってことは………なにかあったね」
そう言いながらケータイを触る。
「とりあえず優一と玲を呼ぼうか。2人ならなにか聞いてるかもしれないから」
と、言うわけで。

「「呼ばれました」」
「「来ていただきました」」
橘と玲がやってきた。
「事情は聞いたよ。綾戸くんがいないんだね」
「うん。なにか聞いてない?」
玲と橘は腕を組んで考える。

「やっぱりなんも聞いてないなー」
橘はそう言った。
「そっか…」
紗耶は頭をがっくりと落として言う。
「(【電話板(仮)で連絡取れないのか?】)」
橘は玲にこっそり話す。
「(試してみるよ…)」
玲は橘から【電話板(仮)】を受けとる。
ちなみに玲のそれはこの間割れたままだ。
(聞こえるかい、綾戸くん)
右手に持って心の中でそう言ってみる。
(綾戸くん、聞こえてたら返事を……)
しかし、いくら待ってみても返事はない。
伝える相手を変えて再び話し掛けてみる。
(絢音さん。聞こえてたら返事くれないかな)
そう、楓だ。
(涼風さんですか?)
思いのほか早く彼女から返事が返ってきた。
彼女はいつもあのプレートを所持しているのだろうか。
まめな性格だ。
(綾戸くんがいなくなったんだ。急いで高梨さんの家に来てほしい)
(祐樹さんが…!?わかりました。すぐに行きます)
そして【電話板(仮)】の通信が途絶えた。
玲は橘にそれを返し、紗耶と真奈美に話をしておいた。
「絢音さんも念のため呼んでおくよ。彼女もなにかしら協力してくれるに違いない」
彼はケータイを見せながら笑った。
と、言うわけで。

「呼ばれました」
「「「「来ていただきました」」」」
楓がやってきた。
「楓ちゃん。祐樹から何か聞いてない?」
「なにか…いえ、なにもないですね」
「そっか…」
仲間だけが集まり、しかし何度も振り出しに戻る。
正直なところ紗耶には、今何をすればいいのか分からなかった。
「そのためにあたし達がいるんでしょ」
そんな彼女の肩を叩いて真奈美が言った。
「…そうだね……。よし!じゃあまずどうしようか!」
一気に吹っ切れたように紗耶は話し合いを始めた。
気持ちの切り替えに定評のある高梨さんである。はい。
「まずは情報収集だよね。今一番あればいいのが、綾戸が何をしに、何処へ出かけたかだね」
「それを知るためには…あそこだな」


ピンポーン

家のインターホンがそんな音を鳴らす。
まあ普通のことだ。
『はーい』
「高梨ですー」
『紗耶ちゃん?ちょっと待ってねー』
少しすると家から人が出てくる。
「あ、祐樹のお友達?今祐樹いないけど…」
祐樹の母、香奈だ。
「そうじゃなくって…。祐樹がどこに行ったか知ってますか?」
「ごめんなさい。おばさんにもわからないわねぇ…。朝早くに急いで出て行ったことくらいしか…」
(急いで…?)
玲は香奈の言葉に少し違和感を感じた。
真奈美もなにかに気付いたようだが、イマイチその正体が分からない。
その間に玲は質問をする。
「香奈さん、その前は綾戸くんなにしてましたか?」
「その前?その前は起きて、ご飯食べてその後ポストを見にいってすぐ出て行ったから…」
((そうか!ポストだ!))
玲と真奈美は同時にそう心の中で叫んだ。
「そうですか。ありがとうございました」
心なしか玲の声が弾んでいるように聞こえる。
「ん?うん。どういたしまして」
礼を言われた香奈は微笑んでそう言った。

〜近くの公園〜
「で、なにがわかったんだ?」
橘がベンチに座りながら訊ねる。
「そんなに大したことは分かってない。ひとつだけ」
「うん。綾戸くんは誰かに手紙で呼び出された。そう踏んでいいと思う」
玲の言葉に真奈美も納得して頷いている。
「けど、なんでそんなことがわかるんだ?」
「彼の性格を考えればすぐさ」
橘の言葉に返答する。
「あの綾戸くんのお母さんの言い様ならポストの手紙の内容を読んで急いで家を出て行ったように取れる」
「でも誰かとの約束があったとかじゃないの?」
紗耶がそう言う。
「仮に何かの約束があったとしても、綾戸は急ぐことなく遅刻するから急いで出て行く、なんてことはしないと思うよ」
「言われてみればそうかも…」
日ごろの行いの悪さが役に立ってしまった瞬間である。
「だから手紙の内容で呼び出されたかなにかしたんだと思う」
「でもどこに…?」
橘と紗耶は頭にはてなを浮かべて訊ねる。
「そればっかりはわからないんだ…」
「うん…」
玲も真奈美もお手上げのようだ。
が、しかし。
「大体の範囲ならわかるんじゃないですか?」
楓がそんなことを言い出した。
「どうして?」
「祐樹さんは自転車で出掛けました。そうですよね?」
「う、うん」
紗耶が頷く。
確かに祐樹の自転車はなかった。
「祐樹さんが出て行ったのは朝。11時の段階でもういなかった」
「紗耶ちゃんが電話を掛けて、探しに行ったのもその後すぐですよね?」
「うん」
また彼女は頷く。
「自転車でいける範囲なんてそんなにありません。だから大体の距離はわかるはずです」
「電車やバスの可能性もありますから、一応近くの駅などの駐輪場も探しておきましょう」
楓はそう言い、そこから指示を出す。
「まず携帯電話を持っている人でわかれて捜索しましょう。真奈美ちゃん、橘さん、私で1つ。涼風さんと紗耶ちゃんの2グループでいいですか?」
「うん」
皆は頷いて応える。
「では人数の多い私達が駐輪場を探しましょう。紗耶ちゃん達は適当な範囲を示しますから、その辺りを調べてください」

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あきゅろす。
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