見える先に向かうだけ!
チェス盤をひっくり返させてもらうぜ!
「そこで記憶が途切れちまってるわけか……」
銀がゴーレムを見上げて言う。
祐樹はゴーレムの話を聞いて予想する。
(多分その人間は能力者だ。手を見た、って言ってたし。恐らくそこで能力を掛けられたんだろう)
能力によって操られていたのだとしたらこの巨兵は悪くない。
祐樹がそんなことを考えていると、ゴーレムは緑の方を見て一度頷いた。
「?」
「『私が我に帰ったときにはすでに建物を斬った後で、森に被害がでないように急いでとんで行った』とのことです」
「飛んだ?お前飛べんのか?」
銀が再び訊ねる。
ゴーレムはコクコクと首を縦に振った。
「マンガかアニメかよここは……」
銀は呆れ口調で呟く。
「だとしたらこいつが会った人間を探すか……。絢音、あと何日残ってる」
「制限時間ですか?今日を除いてあと三日です」
「ふむ………」
腕を組んで考える。
(あと三日以内でそいつを探せるか?……いや、不可能ではないにしても相当難しいだろう。ならどうする?)
「………そうか!」
「?」
急に声をあげた銀に皆は驚いた。
祐樹は銀の元へ行って訊ねる。
「なんかあったのか?烏田」
「ククッ…そうじゃねーか……簡単なことだったんだよ」
楽しげに笑いながら銀は言った。
「発想の転換だ、綾戸」
「?」
「こういう時は相手の立場で物事を捕らえんだわ」
「お、おう…」
銀はその辺にあった木の棒を持って説明を始めた。
「まずこの、イロノ?を操ってあのビルを斬り飛ばしたとする」
「ああ」
丸を描いてその中に「事件」と書いた。
「んな派手なことするにゃぁそれ相応の目的が必要だよな?」
「ああ、まあそうだな」
さらにその丸の中から線を引き、「動機」と書いた。
「じゃ、ここで問題だ」
「ん」
銀はそこで棒をおく。
「この事件が起きて得をするのはだーれだ?」
「…得をする?」
祐樹が顔をしかめて言った。
「なんでもそうだろ?意図的に何か事件が起こされたとき、得をする人間は必ずどっかにいるもんだ」
「ふむ……」
「もう一度聞く。この事件で得をする奴はどんな奴だ?」
「どんなってそりゃあ……」
祐樹は考える。
この事件の被害者は闇金を扱う連中だ。
彼らが被害にあい、仕事ができない。
つまり助かる人間はその反対の立場の者。
「マスター………とか、奴らに狙われてる人間………?」
「そうだったのか……よくわかったな。さすが主人公」
「???」
「?」
祐樹は銀の一言で表情を疑問一色にした。
その顔を見て、銀の顔も疑問に染まった。
「………えっと。もしかしてあんた、その簡単なところがわかってなかったのか?」
「ん?ああ。当たり前だろ、だから聞いてたんだからよ」
「え、じゃああの全てわかっような口調は………?」
「わかったような口調?んなもん使ってねーよ」
「え」
固まる祐樹をよそに、銀は緑の家の方へ歩き出した。
「犯人の立ち位置はわかった。俺が事件を起こした人間だったらこの後どうする………?」


次の日
「綾戸〜」
祐樹が朝学校に着くと真奈美が彼の元へ来た。
「なんだよ田代」
「昨日……どこ行ってた?」
「え」
つい返事につまる。
あまり言えないことだから。
いや、あまりというか絶対言えない。
「ねえ、昨日どこ行ってた?」
「えっと……」
視線に耐えられなくてつい目を逸らせてしまう祐樹。
そして逸らした先には。
「答えてよ!祐樹!」
………紗耶がいた。
紗耶の後ろでは玲が手を合わせて頭を下げていた。
(謝ってるつもりか……!)
「ぜってー許さねぇ……」
「ああ?なんだって?」
真奈美の目が祐樹を睨み付ける。
一瞬怯んだ祐樹だったが今日は違う。
反抗するのだ!
「だああああああ!!うるッさい!!俺が休もうが関係ないだろ!!」

パキパキ…バキッ

横から指をならす音が聞こえる。
「へぇ……よくそんな口が聞けたね、祐樹……」
そんな恐ろしい悪魔の囁きと共に。
今こそ祐樹は死を覚悟する。
超常より日常の方が命が危ない。
祐樹は目をつむり、黙って、勢いよく……



床に額を打ち付けた。

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