小説
B
僕に良くしてくれたお兄さん達にも悪いし、また心配させてしまった僕のバカさ加減と…石と貝殻は条にあげようと思っていたから…
無性にやるせなくて、ペンションまで逃げるように走った。
「あっ尋!!」
「こないで!!1人で帰れる!!」
走って走ってあっという間にペンションに着いた。
トボトボと部屋に戻ろうとしたがオートロックなのを忘れて鍵も持たずに出てきてしまった。
仕方なしに一階のテラスのベンチにボーっと座っていた。
「もしかして条に怒られちった?」
「あっ拓海さん…」
エプロン姿の拓海さんは朝食の準備が一段落ついたとか。
「もうさーあいつ厨房くるなり尋戻ってるか!って
聞いてきてさーまじ凄い焦り具合。んで、見てねーわって言ったら
砂浜1人で行くなんて!!って全力疾走よ。」
「…僕、条に怒鳴られた事無くて…石と貝殻…二人の思い出にしたくて。
景色に浮かれて条を置いて勝手に出掛けちゃって…馬鹿ですよね。」
「いや、まぁ怒鳴るのは…怒鳴ったの?」
「えっ?はい…怒鳴りました。」
拓海さんは大層びっくりしている。
「あの人間らしくない可愛げの無い条がねぇ…」
「そんな感じだったんですか?」
「うん尋ちゃんに会うまでは、そんなに笑わないし怒らないし…群がる女の子にも本当の感情なんて見せてなかったよ。怒鳴る…ねぇ。」
「群がる…女の子…」
ちょっとムッとしてしまった。
「いやいやそこ問題じゃないから!
まったく気が抜けるなぁ尋ちゃんには…」
拓海さんはクスクス笑いながら話す。
あ、笑い方少し条と似ている。
やっぱ条と従兄弟なんだなぁ。
あの毎日ニコニコ(尋限定)している条を怒鳴らせたんだから余程心配させたんだ。
「悪い…ことしちゃった。」
「大丈夫!!まぁ〜大概あいつも尋ちゃんに過保護だけどねぇー仕方ないけどねー尋ちゃん変態ホイホイだしなぁ。」
なんかそれ嫌だなぁ…
「まっ後は二人で話して!!」
拓海さんはパッと立つと後ろを向いた。
後ろには条が立っていた。
「俺厨房に戻るからあと少ししたら席ついとけよー!!」
「おう…拓海、サンキュ」
「気持ちわりーよ。お前にそんなん言われたら!!」
おどけながら厨房に戻っていった。
「条…」
条は動かない。
「ごめん…ね。」
「条?」
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