時の戦士
時の戦士 9
「その宝玉を大切にしてください。ナナリー姉様に会って誤解を受けられたらその宝玉を見せなさい。」
ドミトリーは泉の中を覗き込むように体を前屈みにして座っていた。
ララミーに恋をしたようだ。
あの神々しく美しい水の精霊神ララミーに。
なんか笑ってしまう。
それほどドミトリーは一目惚れしてしまった事実に。
「そろそろ行くぞ。オギー沼に。ナナリーってどんな容姿何だろうなぁ。
さぞかしララミーちゃんのように美しいのだろうなぁ。いゃあ」
声がもううきうきしてハッピーになっているドミトリー。
確かにナナリーがどんな容姿かは気になる。
でも俺はオギー沼がどこにあるか知らない。
このジェラルドが着た旅人の服で行けるのだろうか?
「ドミトリー…俺はオギー沼がどこにあるかすら知らない。どうすりゃいい?」
ドミトリーは、ん〜?と言うかのように顔をしかめる。
腰に指していた剣を取り出して柄のところをじっくりと見る。
俺は剣ばかり見ているドミトリーが心配になって一歩ドミトリーに近づいた。
剣の柄のところに地図が彫ってあった。
ここの泉も書いてある。
「ドミトリー…?地図なのか?」
「ああ。どうすりゃいいかも分かる。」
「次はどうすりゃ?」
にやりと笑うドミトリー。
にやりと笑うとかっこいい顔がもっとかっこよくなる。
キリッとして凛とした空気が漂う彼。
その彼は泉に駆け寄っていく。
ララミーか?
ドミトリーは大きな声でララミーを呼び出す。
ララミー!!
泉の真ん中から綺麗な水龍が現れる。
綺麗な鱗に淡い目。水がよく似合ってると言うぐらいの綺麗な龍だ。
少し体を揺すって水の波紋に体を任せているようだ。
ガタンッ
空から木箱が落ちてくる。グゥゥンとゆっくりとしたようなスピードでくるくる回っている。
それは見事にドミトリーの目の前に落ちた。
しゅうしゅうと黒い煙が木箱のまわりから出ている。臭い。
「ドミトリー!この木箱は貴方が任務を成功させたら開けることが出来ます。」
ドミトリーは目の前に落ちた木箱には宝が入っていると思い、必死に開けようとする。
髪の毛を振り乱して鍵穴らしき所を引っ掻き回している。
哀れだ。
フッ
水龍が静かに笑う。
かと思ったら空まで高く象っていた水龍がだんだんと小さくなりララミーの姿になる。
泉の真ん中に立っている。こっちへツカツカと歩いてくる。
パァン
ドミトリーに平手打ちをするララミー。
「貴方は解らないの?お金に目が眩んでしまってはダメッ。この鍵穴に合う鍵はナナリー姉様だけが持っているのよ。でもナナリー姉様には開けられない。」
ドミトリーはひどく驚いた顔でララミーを見上げる。鬼気迫る気迫だ。
「ほう…聞くが何が入っているのだ?このみすぼらしい木箱に!!」
思いっきり足を振り上げ木箱を蹴る。
ガツン!
と鈍い音が辺りに響いた。
ララミーは悲しそうに顔を背けて俺を差した。
「この木箱の中には時間の神と言われた男が作ったものが入っているのです。アレン?意味はわかるでしょう。貴方の敵と言われている者の作ったものです。見たいでしょう…。この木箱を開けられたら次の時代が見えてくるはずです。」
ドクン ドクン ドクン
心配がやばいぐらい高鳴っている。
クロノス…!ジェリーを殺した張本人!
開けてみせようではないか。
「ララミー…。是非ともナナリーがいる泉に行きたい。行き方はなんだ?」
ドミトリーが
「おいっ!この木箱の中には何が入っているんだ!おしえろっ!」
ララミーがくすっと笑う。
綺麗な笑顔だ。
と思ったらララミーの後ろから水が津波のようにこっちへむかってくる!
ララミーの綺麗な笑顔がだんだんと悪魔のようになっていく。
「この水がナナリー姉様の所に連れていってくれますよ。」
もう間に合わない!
ドミトリーは木に必死によじ登っている。かと思ったらドミトリーが落ちてくる。俺は無理だと思う。
だって水があと10mでこっちを飲み込む。
ザッパァァァァン !!!
うわぁぁぁぁぁぁぁあ
服がびしょ濡れになってしまう。
ドミトリーはどこだ!?
ああ…こんなことも考えられなくなる…
苦しい…どこにいるんだ…ドミトリー…
ジェリー……
アレンは薄暗い水の底に沈んでいく…
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