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夜の銃弾
夜の銃弾 J


綾は細長い道をひとりぼっちで歩いていた。その先にいる男の子に会うために…。


足元には枝や枯葉がたくさんあって、歩くとパキパキ音をたてる。

「ねぇ。お姉ちゃんは誰?」


さっきの男の子が綾の目の前にいた。
枝や枯葉を踏むのに夢中で気がつかなかった。

「誰に見える?」

とびきりの笑顔で答えた。小さい子ならこの笑顔でなつくと思った。だが、この男の子は違った。

「何?この笑顔。僕は騙されない。僕の母さんもこの笑顔をしたんだ。病気の僕を置いて他の男の人と一緒に行くときに。」

「えっ…。そうなんだ…だから孤児院に。あなた…何歳なの?」

「8歳だよ。お姉ちゃんは?」

「私は…19歳だったような気がする。」

「合ってるよ。お姉ちゃん。体の定めがそういってる。なんか…24歳の時に劇的出来事があるらしいね。」


「24…。あっ、創造者に10年後にどうなる何とか言われたんだった。あの時は14歳だったっけ。大事なことを思い出させてくれてありがとう。」

「お姉ちゃん?大事な?」

「あっ、坊や、そうだよ。」

「坊やじゃなくて、スミスだよ。」

「スミス…またね。」


スミスの顔がニコッと笑ったその瞬間、綾は創造者の部屋にいた。

「創造者!!あなたはスミスを殺したの?!」

誰もいない部屋に綾は叫んだ。
シーンとした静寂が綾をおそう。



ガラガラッ。

ドアが開く音がする。

創造者が現れた。

「創造者!なんであの映像を見せるの?」


「…」

創造者の顔に涙が溢れていた。

「…どうしたの?創造者?」

「ありがとう…綾は優しいね。小さい僕に一度も呼ばれなかった名前を呼んでくれて。今もスミスじゃなくて創造者とよばれてるしな。」

「え?あのスミスがあなた?」

「そうだよ。」

創造者は自分の生い立ちを綾に話した。
それは悲惨なものだった。


「僕に父はいなかった。生まれた僕のために毛布を買いに行って…馬車に轢かれた。
母はその日から僕を養うために体を売った。大変だったと思うよ。5歳のある日、僕は高い熱を出した。ずっと熱が下がらなくて母は治らないと思ったらしい。僕を置いて行ったんだ。それから母には会ってない。多分死んでるんじゃないかな?
それから僕は孤児院にずっとさ。奇跡的に熱が下がってね。
孤児院を出て、ずっと怪物の勉強をしたんだ。そしてある日ブレッドが来てある薬を怪物が入っている桶に入れた。怪物は魔物になった。その魔物で復讐をしろと言われた。
それからずっと今さ。孤児院ではスミスじゃなくてボケって呼ばれた。母さんにはうすのろさ。」

「そうなんだ…。だからスミスに反応したのね。復讐はやめてくれる?」

「うん。スミスって呼んでくれたし。」

綾は歓喜に包まれた。創造者との戦いに終止符をうてた。

「僕はもう人前に出ないよ。215歳の顔は今の人にきついらしい。変な顔だろ?」

「215さい!!変な顔じゃないわ…。ブレッドに長寿の薬を貰ったの?」

「うん。綾が24歳になったらまたくるね」


創造者、いやスミスは消えた。
綾はまた来た道を戻ってメレディスや仲間のいるところに戻った。



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