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51席順のひみつ
坂本はたまに質問の返事に笑みだけを返す事がある


その笑いの中には結局こっちにとって、いい事なんか何一つ含まれてないのだが、唐突にそういう事をされるとやはり毎度気になってしまうわけで


そしてそれはオレ以外の人間にとっても同様、特に女の子にはよく効くらしい



「坂本くんってどんな子がタイプ」



「どんなって?」



「じゃあこの中だったら?」


「んー」


「なんで笑うの〜!!」



ほら今みたいに



「おまえさ「バーカ!!てめえ呼ばれてないのに来てんじゃねーよ!」



「お前こんなとこでデカイ声出してんじゃねえよ、店員見てんだろ、ねーえ黒ちゃん」



「手島、話って坂本の事?それだったらまた今度にしろよ疲れてんだよ今日」



「えーえーあのねーじゃなくてー・・あ、ケンケン飲むもん足りてるかなー?」




っとにここうるせーな!!
せめて会話しろよ!

全部一方通行じゃん!






【席順のひみつ】






オレらが到着してしばらくしたら次々にやってきたよく知るメンツ


来たはいいが来てからずっとこの調子で、ケン完全にマイッチングです



女の子達はいい感じに酒が入ってきてこの状況をあんまり気にしてないのは救いだが、何を考えてるやらわからない坂本の横にいるオレは気が気ではない




そしてらんと横須賀くんの間にいる黒やん
手島、ひょっとしてお前なにもかもの事情を知っててこのメンバーを集めたのか


そう思って手島をチラ見してみたら何を勘違いしてるのか嬉し気な様子で彼女にメールを打っていてこいつは偶然にロト6を当てたのだと知る。





「横須賀くんは髪短い子と長い子どっちが好きー?」


「オレ?オレは長い子が好き」



目の前の子に質問されて、黒やんの髪をぴょんぴょん触りながらいつものスマイルで答える横須賀君をオレオは目撃。



オレすら目撃してしまう位だから、らんがその行動を見逃すはずがなかった。




「黒やん明日髪切りいこっか!久しぶりにバッサーとさ〜!!」



「はあ?なんでお前と髪切りいくんだよ、つーかお前この前切ったばっかじゃん」



「一人で行けよ天パー」


「はい、オレ横須賀くんとは喋ってないんで、黒やん最近寝ながら髪切りたい〜っつてんだって!ヤバイって!深層心理では切りたがってんだって!」


「いやー、オレは髪短くしたら小学生の頃の顔になんだって・・」



二人の意地で振り回される黒やん、可哀相に髪型くらいほっといてやれよ




「あ〜でも黒川さんって超目えおっきいから髪切ったら若くなるんですね〜」



三人の会話にうけていた女の子が、何も知らずに落ち気味の黒やんに言ってはならない一言を言い放った。



「え・・そんなに目でかい?」



「うん!化粧したその辺の女の子より全然デカイですって〜!うらやましい〜!」




「そんなに・・・」




ああ黒やんはやっぱりいつも可哀相でもうこれ以上盗み聞き出来ないよ



黒やんの絵をかくときやったら目を強調してかく坂本には怒れても、何の悪気もない初対面の女の子には怒れないだろうしな




三人の様子をこっそりと観察していたオレが、ふと坂本に視線を戻す



坂本の視線の先にはオレの目の前に座る女の子


ヒールのせいか背が高くギャルでちょっと気が強そう。


坂本は初めっから自分からはこのこにしか話し掛けない事にオレは気付いていた


それに何か深い意味があるとは、考えないようにしてるけど





「それ本物?」



突然口を開いた坂本の言葉の対象は、その子の手首に光る時計。


坂本にそれを指さされた女の子は、嬉しそうな顔で誇らしげに返す。



「もち本物だよー、かわいくない?」



「えー超高いんしょ、自分で買った?」



「親から貰ったんだ〜時計はいいもんつけろって」





彼女は嬉しそうにあの有名なD&Gをくるくる回す


そのキラキラと光るそれを映す坂本の目もキラリと光った。



まさか、こいつ、まさかいくらなんでもオレの居る前でそんな事はないと思うが


このこの事狙ってたりしないよな、親が金持ちだから?坂本が好きそーな背え高い美女だから?


あれ、このこhitomiに似てるっけ?



どうなんだ、一体何を考えてるんだこいつは?



オレは一体お前のなんなんだよ、オレはそれを知らないから、お前がこのことどうなろうとどんな反応をとればいいかすら分かんねーんだよ、坂本。



二人が楽しそうに話してても黙ったオレの横で、坂本は何かを確信したような顔で一瞬だけオレに視線をよこす。



やっぱりその視線の意味は分からないが、無性に心臓がドキリとした




そして、次に坂本が発した言葉は、オレの混乱を余計に増す物




「ねえ、オレと賭けしない?」



「え?賭け?」




いきなり会話の流れを切り、女の子に賭けを持ち出す坂本。


は?何、賭けって。




「オレが勝ったらさー、知り合いに可哀相な古着屋がいるんだー、そいつ自分の所のTシャツ100枚売らないと首吊るんだって、だからそいつの為に君の権力でも財力でもどっちでもいーから活用して買ってくれる人集めてくんない?」



「はあ?何それマジの話?てゆうか私が勝ったら?」



「なんでもいいよ」



「なんでもって、」



「オレがなんでも言う事聞いてあげる」




何でも言う事聞いてあげる、まさか坂本の口からこの言葉が出て来る日が来ようとは



獲物を誘うような坂本の顔は悪魔の笑顔。



何かを企んでいる事は間違いないが、やはりどういう計画なのかはさっぱり不明だ。



こんな事言って大丈夫なのか?思考が読めない坂本に女の子は完全に嵌まってるように見える。



お前が負けたら、このこが何言うかなんてオレにも読める。





「で、何すんの?」



「今から15分の間にオレがする事に驚いたらそっちの負け、無反応でいれたらそっちの勝ち」




「何それ〜どういう事?」



「15分の間に分かるって、判定はテチマ」



「え!?オレ」



「そう、平等によろしく」



いきなり話に巻き込まれた手島は驚いて坂本に視線を向ける。


なんだよ、坂本、オレは全然そっちのけなんですね


こんな賭け、とらえようによっちゃ口説いてると思われても仕方ない


女の子はドキドキしたような顔でじっと坂本を見つめる。


やっぱり合コンなんか来たくなかった。


オレはこういうのが見たくなかったんだよ。


坂本は分かってんのか、オレが隣に居るっていう事。

何も出来ないけど、泣けと言われたら、今すぐにでも泣けそうな事。




「つーか坂本くんって仙山のサヤって子と付き合ってた?中央の時!」




ハートに火がつきそうな女の子とハートを有刺鉄線で縛られてるようなオレを前にして、ミスター空気読まない手島くんはこのタイミングで坂本にこんな事を尋ねやがった。


確か前にアンジー聞いた坂本の元カノの話。


坂本から詳しい事を聞いた事はなかったが




「サヤサヤサヤサヤ・・あ〜付き合った付き合った。二日。」



「二日〜!?やっぱりあの女超大袈裟に言ってるじゃ〜ん!なんかこの前仙山の友達遊んだ時さーそのサヤって子もいて自分は坂本の女だったって超みんなに言いまくってたよ」



「ふーん」



「坂本くんの女ってフレーズだけでも気分いいんだろ〜ね〜」




「へーそんな気分いいんだ、オレ坂本の女にはなった事ないからどんな気分かわからねーわ」



「そりゃー坂本くんは坂本の女にはなれねーよ、坂本くんなんだから」




いつの間にか会話はとてつもなく阿保なものになっている


さすが手島、恐れいるぜ。

つーかやっぱり本当だったんだ、二日とか逆にどうやって別れるんだよ



馬鹿な話で時間は刻々と過ぎていくのに、坂本が動き出す様子は感じられない


そんな様子にオレの方が焦り始め、さっきから無駄に心臓が速い。


そもそも、驚かしたら勝ちってなんだ、坂本は一体この状況に何をする気なんだ?



テロ?ハイジャック?隕石?
ああ!一体この店に今から何が起こるというの!?





「でも坂本の女って言えばこの辺じゃ怖いもんなしだーって気分なんじゃね〜かな〜」



「何、安全対策みたいな」


「いやちょっと違うけど」


「よし、じゃあリアルな感想を聞いてみっか」



「はい?」




手島の話に淡々と返事を返していた坂本が、その一言の後、急に尖った歯を見せてニヤリと笑い、突然オレを向いた。




「ねえ」



「何?」



坂本の瞳はいつものようにオレを硬直させて捕らえる。


だから反応も状況を掴むのも




「お前どんな気分?」





遅れる。





オレがまず認識出来たのは、坂本は賭けに勝ったという事。


手島が判定しなくても全員が声も出せずにこっちを凝視しているから



次に認識出来たのは癖で一瞬目を閉じてしまったという事。アーメン。




「え、は、いえ、何が、どうなってんの?」




オレがみんなの前で坂本にチューされた事をようやく認識出来たのは、手島が裏返った声で勇気を出して尋ねてきた後だった。

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あきゅろす。
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