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健多くんシリーズ。(短編)
逃げ場のない。
説明:痴漢、ぬるめ愛撫、焦らし






痴漢なんて自分とは別世界の話だと思ってた。




――――逃げ場のない。



いつも朝のラッシュ時に登校してしまうのは、僕が早く起きれないから。

あと二本早い電車に乗れば座席についてゆっくり高校に向かえるのはよくわかってる。

でもいつも、けたたましく鳴る目覚まし時計を握りしめたまま、僕はしばしの葛藤の末に意志を曲げてしまうのだ。

もう最近では諦めがついた。


しかしこの日ばかりは自分の心の弱さを心底恨んだ。


(………な、んか)

当たってる気がする。

もちろん今日も電車は満杯。

身長も平均的な僕の腰のあたりに誰かの手なりカバンなりがあっても全然おかしくない。

僕は男だし、周囲もそれほど気を使わないだろう。

でも…………

………………カリッ………………カリッ………

(…………っ)

なんか、引っかかれてる………?

ちょうどお尻の谷間……爪で引っかかれているような感触。

僕は少しだけ怖くなり、窮屈なカラダをなんとか開かない扉に向かい合わせた。

カリ、カリッ

まだ感触は続いている。
脚を極力しめた。

そうすることでこの気持ち悪い感触から逃れられるような気がして。

(カバンの縁が当たってたんだ)

脚をしめたことで案の定あの引っかかれる感じがなくなり、僕は小さく息を吐いた。

(痴漢なんて、ちょっと自意識過剰だったな。なんか恥ずかしいや)

僕は小さい頃はよく女の子に間違えられ、時折変質者に遭遇することがあった。

今では筋肉こそあまりつかないものの、しっかりとした男のカラダをもち、そんな不幸にもすっかり縁遠くなっていた。


電車に揺られ、昔のことに思いを馳せていると。

「………………っ!?」

不意に、腕を掴まれた。
満杯の車内で前に回してカバンを持っていた手を。

突然のことに驚いた僕はカバンから手を離してしまう。

ドサッとかすかな音を立て、カバンが僕と開かない扉の間に落下した。

「ちょっ」

「……………すみません」

抗議は耳元でささやかれた男の声に遮られた。

このタイミングで男に謝られたら、僕がぶつかってきた男を非難しているのだと周囲は思うだろう。

(確信犯なのか!)

怒りが湧いてきて僕は後ろ手に掴まれた手を振り解こうとした。

しかし、男の力は強くびくともしない。

やめてください。

そう言おうとして僕は少し躊躇った。

ここで周囲に助けを求めてたとえこの行為が終了したとしても、こんなに我が校の生徒がいる前で痴漢されただなんてバレたくない………

学校についてからなんと言われるか考えただけでも恐ろしい。

そんな僕の考えを悟ったのか、男はかすかに笑ったようだった。

そうだ。こんな密集した電車の中で何ができる。

せいぜいカラダに触るくらいだ。

そんなの、少し我慢すればいいだけの話じゃないか………

僕は腕の力を抜いた。

あと15分ほとで駅に着く。それまで何をされても反応しなければ痴漢も興味を失うだろう。

そんな考えが頭に浮かんだ。



僕の抵抗がなくなったと知るや否や、男の行動は大胆になった。

まず、後ろに回された腕は男の片手でまとめて拘束され、空いた右手が前に回ってきた。

カリ、カリッ、カリ

先ほどまでは尻の間を引っかいていた指が、僕のペニスを引っ掻く。

先ほどとは違う不規則なリズムに、僕は小さくカラダをるわせた。

いくら好意がないといったってそれは高校生の性に敏感なカラダ。

直接的な刺激に反応はさけられなかった。

(あっ…………んっ)

眠っていた性器が、勃起る。

少しずつ、背筋に走る痺れが大きくなるほどにムックリと………

カリッ、カリ

性器全体をまんべんなく引っ掻いていた指は、今は上を向いて主張している先端に的を絞っていた。

僕は必死に膝を閉じ、感じまいと唇を噛み締めた。

(ひっ!!)

しかし指は新たな標的を見つけたようだ。

制服のブレザーの中を這い上がり、僕の小さな胸の突起へ………

先ほどからの性器への愛撫で、僕の胸の飾りはすっかり勃ち上がっていた。

男もそれに気づいたのだろう、小さく笑い声がきこえた。

クリクリクリクリクリ

「はっぅ………あんっ、やっ、ん」

声が我慢できない。

男の手が親指と中指で僕の勃った乳首を摘み、人差し指で転がし始めたからだ。

シャツの上からのもどかしい愛撫………

敏感になって腫れ上がっているであろう乳首に、布の擦れる感じがたまらない………

僕のアタマは完全に背筋を鋭く走る痺れに占められていた。

(いやっ………パンツが塗れてきちゃう………!!)

にゅる、と下着の中でペニスが滑った。

その事実がまた僕を興奮させる。

クリクリクリクリクリ

男の手は依然として乳首を細かく転がし、

僕の腕を拘束していた左手は…………

僕の腕を後ろに置き去りにして、前に回ってきた。

「ひゃんっ!?」

突然倍増した刺激に、思わず小さな悲鳴が上がった。

(やら、やめてやめっあんあんあんあっあんきもち、いいっ!!はんあんっ!!!)


くちっきちゅくちくちくち
クリクリクリクリクリュコリコリコリ


「あぁっ……………ふっあ!!!」

力が入らない…………

もう、イっちゃ………!!!

「………………えっ!?」

僕がはしたなくも全身を突っ張って下着の中で精液をまき散らそうとしたその一瞬前、

乳首と性器から唐突に指が離れた。

(やだっなんで!)

冷静に考えればイかないほうがいいのだ。

男の悪戯はすべて服の上から。

イってしまえば一枚しかないパンツがぐしょぐしょになってしまう。

(なんでなんで、イきたい!)

しかしその時にはもう、僕のアタマは男の厭らしい悪戯にとろけていた。

必死に刺激を得ようと腰を揺するがもう男は触れようともしない。

カサッ

小さな音がして、ズボンの尻ポケットに何かが入れられた。

プシューッ

戸惑ったまま電車が目的の駅に到着し、ぎゅうぎゅうに押されていたカラダが楽になる。

「あっ」

痴漢の男は背の高い後ろ姿を残し、すぐに流れる人混みに紛れた。

僕は少し浮かんできた涙を拭い、足元に落ちていたカバンを拾うと、疼くカラダを宥めながら心持ち前屈みに駅のトイレに向かって走った。








Fin.


逃げ場のないカラダ
逃げ場のない快楽
逃げ場のない、想い

続く。

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