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ひぐらしハルヒの憂鬱な頃に

≪TIPS4≫
≪園崎詩音と涼宮ハルヒ≫


「お姉に言われたとおり、誘っておきました。綿流しにはバッチリ来てくれるって!」

「ホント?ありがとう詩音!!!恩に着るよ〜〜〜!!」

「でも、その場に他の人が何人かいて、その人たちも行くことになっちゃいましたけど。

お姉を助けた時に一緒にいた人たちです。昨日言ってた涼宮ハルヒって子とか、その友達とか。

何かノリノリでしたよ、皆さん。私まで綿流し特別ナンタラに任命されちゃったし。

ってわけで、ま、大所帯で行きますけど。まずかったですか?」

「えっ、いいよいいよ!全然構わないって!詩音が一緒のほうが話しかけやすいし。

はー、でもよかったぁ〜……今までこういうこと一度も無かったからさ、何ていうか、私おかしなことしてるんじゃないかって不安でさ〜」

「くすくす。全然おかしくないですって。別の意味で可笑しいですけど」

「ん、ん?なになに?どういうこと……? それにしても詩音、頼りになるねぇ」

「こういうのは任せてください。じゃ、あさっては頑張って!お姉の乙女モード、

期待してますから☆ くすくすくす」

「うん。頑張ってみるよ、ありがとう詩音。それじゃあね、おやすみ」

 今日、魅音に言われたとおり、前原圭一という男の子を探し出し、綿流しに誘った。

珍しくあんなことを言うお姉の頼みだ、きちんと果たさねば。

 いや、別に珍しいというわけでもないか。魅音だって年頃だ。

 魅音が助けられたとき、一緒にいたのが涼宮ハルヒなのは間違いなさそうだし、とすればSOS団の部室に行けば会えるだろう。

そう思い、友人に場所を聞いて、放課後部室に行く。部室と言っても文芸部室だ。学校に認可されてない怪しい団体が、文芸部の部室を普通に使っている時点で得体が知れる。

 ドアを開けた瞬間、そこに広がる空間が私の既成概念をブッ壊した。メイド服を着た可愛らしい女の子が床に正座して、例の涼宮ハルヒがその子の髪をいじっている。

横では男の子が2人、楽しそうにオセロに興じている。部室の隅で、おかっぱ頭の女の子が分厚い本を読み耽る。

何の、部活なの!?

「えーと、すいませ〜ん……前原圭一くんは、いらっしゃいますかー……?」

 恐るおそる話しかけると、椅子に座らされ、私の質問は無視された。

「いらっしゃい!!ここに来るってことは普通の人には解決できない悩みがあるのね!?ほら、見てよ圭一!?

あたしの言った通りでしょ!!宣伝の効果があったのよっ!!! さ、何の依頼か聞こうじゃないの!」

 前原圭一に用があって来たはずなのに、何故か涼宮ハルヒに話を聞いてもらうことになった。

メイド服の子にお茶を出され、くつろいでくれと言わんばかりの空気を醸し出す。

「っていうかお前、昨日の興宮で絡まれてた子じゃないか?へぇ、うちの学校だったのか!!」

「あれ、言われてみればそうね」

「いえいえ、絡まれてたのは私の双子の姉なんです。で、その姉からちょっと頼みがあって来たんですよ」

 事情を話すと、前原圭一は快諾してくれた。というより、涼宮ハルヒが異常に乗り気になった。

「素敵なお祭りじゃない!!?ゼヒ行くわ!みんなあさっては空けておきなさい!!それと、詩音さん……だったっけ?あなたをSOS団綿流し担当特別案内係に任命するから、一緒に行きましょうよ!」

「ええ!?? ……えっ、ええ、はぁ……。あー……し、詩音って呼び捨てでいいですよ……」

 有無を言わせぬ勢いに押し切られて、私まで一緒に行くことになった。

 その後、彼女らと雑談をした。いい話し相手が来たとばかりに、SOS団結成の理由やら過程やら、メンバー紹介されたり、どんな活動をしてるとか、6〜7割涼宮ハルヒが喋っていたけど、まぁ、楽しかったよ。

 次の日校門を出るところで、涼宮ハルヒに会った。

「あれ、今日はやんないの?SOS団。パトロールか何かしてるんじゃなかったっけ?」

「聞いてよ詩音、なんか古泉くんと有希が、みくるちゃんもかな、用事あるんだって。一応あそこは文芸部の部室だし、有希がいないとやっぱちょっとね。詩音は今帰るとこ?」

「んー、私はちょっと図書館に行こうかと」

「そうなの?あたしも一緒に行っていいかしら!?このまま帰ってもつまんないし」

 昨日の今日でマンツーマンか。参ったな。

「いいですよ。図書館が面白いかどうかは分かんないけど」

 図書館で借りていた本を返却した後、私たちは休憩コーナーでお喋りした。この涼宮ハルヒって子は退屈な日常が嫌で変わったイベントに飢えている。そんな感じだ。その気持ちは分からなくもない。

「私ね、以前は小中高大一環の全寮制私立学園に通ってたんですよ。しかも女子校でね。

私に言わせりゃあれは学校じゃなくて施設だけどね。そんなとこに幽閉されて、聖書読まされて先生をシスターと呼ばされて、周りの生徒たちが素直に洗脳されていくなか、私はどうしても馴染めずに問題児扱いされてました」

「へぇー、最低な学校ね。信じらんない、あたしだったら3日で窒息死だわ」

「かもねぇ。くすくす」

「でも何で北高に通ってるわけ?その学校はやめたの?」

「脱走したんです。家の事情とか、やめたいなんて言ってやめさせてもらえる雰囲気では無かったので。

生徒たちは各界要人のご令嬢ばかりで、施設は完璧なまでの厳重警備、敷地中に張り巡らされた監視カメラなんかの防犯システム、常時配備されてる警備員たち

……それは同時に脱走を困難なものにしてくれまして。そんな監視の網をかいくぐって脱走した時は面白かったですよー!?

綿密な計画のもと、合鍵盗んでルートを確認して……実行するときのスリルは失神寸前でしたね!

それでまぁ、北高に編入して通うことになったんです」

「カッコイイじゃない!映画みたいね!羨ましいわ……あたしもそういう体験したいのに」

 そんな話をしているところに、一人の女性がやってきた。

「あら、詩音ちゃんじゃない。すいぶん久しぶりね」

「……あぁ、ご無沙汰してます、鷹野さん」

「なんだか他人行儀みたいな感じがするわ。昔みたいに三四でいいのに」

 鷹野三四さんという人だ。上品な胡散臭さ、この人を一言で表すとこうだろう。

雛見沢の病院でナースとして働くかたわら、毎年綿流しの日に起こる連続怪死事件、通称"オヤシロさまの崇り"を調べることをライフワークとしている。

「お友達もご一緒なの?初めまして、私は鷹野三四。三四って呼んでくれていいわ」

「涼宮ハルヒです。はじめまして」

「明日の綿流しに、彼女とそのお友達と一緒に行くことになってるんですよ」

「そうなの?そういえば明日は綿流しね……今年は、誰が死んで誰が消えるのかしら?くすくす」

 いかにも涼宮ハルヒを刺激しそうな話題をさらりと切り出す。見ると涼宮ハルヒの目が輝き始めている。

「なんですか、それ?どういうことなの?」

「ここから少し離れた雛見沢村ではね、毎年綿流しの日になると一人が殺され、一人が行方不明になるの。

去年まで、もう4年も連続でその事件が起きてるのよ?個々の事件はそれなりに解決していて、関連性については否定されている。でも、毎年同じ日に、同じ形で起きるんだもの、これを偶然と片付けるには疑問が残るわ。

それで、村では歴史的な信仰になぞらえて『オヤシロさまの崇り』、そう呼んでるの。もし本当に関連性ゼロなら、

本物の崇りなのかもしれない。そう見せかけて、実は誰かが毎年強い意志をもって起こしているのかもしれない。

私はね、その事件について色々と調べるのが趣味なの」

「そんな事件があるの!?詩音? もー、何で昨日教えてくれなかったのよ!? すごい、すごいわ!

……これはSOS団で調べないわけにはいかないわね!!! それで、明日も事件が!?」

「SOS団??? ……明日事件が起きるかどうかは、明日になってみないと分からないわね。くすくす。

でも私は、きっと何かが起こる気がするわ。興味があるならもう少し詳しくお話しましょうかしら?」

 涼宮ハルヒの反応が嬉しいのだろう、鷹野さんは怪しく微笑みながらバッグの中のスクラップ帳を取り出した。

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