ひぐらしハルヒの憂鬱な頃に
ページ:12
待ち合わせ時間まで五分ほど余裕をもって到着したエンジェルモートには、すでにSOS団の三人が俺を待っていた。とりあえずテーブルに着いて、アイスティーを頼む。
「すいませんね、急に呼び出してしまって。現在この世界がどういう状況か、その対策など、朝比奈さんと長門さんのおかげである程度の予想が立ちました。
それに関連してお伝えしたいことがあるんですが、どうしても今日がよかったもので」
それは構わないが古泉、別にお前に呼び出されたわけではない。注文したアイスティーが来ると、やや困り顔の朝比奈さんが話し始めた。
「えぇと、こないだお話したように、うーん、結論から言うと未来と連絡が全くつかないんです。
考えられる原因で一番可能性が高いのは、ループしてるってことなんだけど……でもあくまで一般論で、断定はできないんです。閉じ込められた側からは、はっきりと分からなくて……」
さらにSOS団の知恵袋たる長門が淡々とした顔で付け足す。
「それと時間平面理論の応用による遡及的改変行為が認められる」
いまいち話が見えないが、要するに、ハルヒ、か?
「いえ、その可能性は半々かと」
何故?というか結局どういうことなんだ?
「簡単にまとめますと……ここはループ世界の可能性が高く、我々はそこに押し込められたということです。その上で、この世界の改変も行われていると考えられます。
時代が昭和ですので、時間移動もしくはそれに準じた何かがあったことは間違いないでしょう。
しかしそれだけでは朝比奈さんが未来と連絡が取れない理由が分からない。そこでループの可能性が指摘できます。さらに、単に時間移動しただけなら周囲が我々を認識していることが不自然です。
したがってこの世界はそのように改変されたものだと考えるのが妥当、というわけだそうです」
なるほど。んで、ハルヒが犯人の可能性は半々の理由は?
「おそらく改変のせいでしょうが、困ったことに我々の能力についてはその殆どが抑制されています。
これが涼宮さんの望んだ結果とは考えにくいのです。逆にそこら中の人に特殊な能力が備わっていたら、涼宮さんによる可能性は高いといえるかもしれませんが」
確かに。けど、じゃあ誰がこんなことするんだ。いくらなんでもワケ分からん。
「それは我々にも分かりませんが、北高が存在していることから、その関係者の可能性は高いかもしれません。さらに……前回お話した時すでに気付いてらしたようですが、あなたのアダ名、
それは妹さんが広めたそうですね。しかしこの世界には妹さんがいらっしゃらない。にも関わらず、周りの人たちにアダ名で呼ばれる。改変者がそのような認識をインプットしたのでしょう。
だとすれば、少なくともあなたのアダ名を知る人間が改変の犯人であると推測されます」
元の世界の北高で俺のアダ名を知るやつはクラスメイトとSOS団、あと同じ中学の出身者ぐらいだ。
その中でこんな真似をしそうな奴は……ハルヒを除けば一人だけいるな。いるというか、いたな。
「ちなみに、この世界でその方の存在を確認しました。涼宮さんと同じクラスです」
喉が急激に乾燥していくのを感じて、俺はアイスティーを流し込んだ。
それで、どうすれば元に戻れるんだ。
「……少し話が回り道しますが、明日は綿流しというお祭りだそうですね」
うん?らしいな。知ってるのか。
「園崎詩音さんという方から聞いて知りました。昨日SOS団の部室を訪ねてきまして、いきさつについては長くなりますのでまたの機会にお話しますが、SOS団を綿流しに誘ってくれたんです」
園崎……詩音?ちょっと待て、俺の行ってる学校には園崎魅音てのがいるぞ?姉妹か?
「双子の姉がいると言ってました。まさかあなたの学校とは……」
「わわっ、そういえばあたし、今度詩音さんにここのレストランの制服もらうことになったんだ……
昨日メイドの衣装着てたから何か勘違いされちゃったのかなあ……ふえぇ、よく見るとすごい露出……」
うむ。元の世界には是非それを持って帰りましょう!っと、で、綿流しがどうした?
「僕はSOS団が綿流しに行くことになったのは、涼宮さんが望んだからだと思うんですよ。
涼宮さんは何かイベントが欲しくなった、そのため綿流しの情報がもたらされたのではないかと」
「涼宮ハルヒに制限がかかっていないのであれば、原状作出が元の世界に戻る鍵」
古泉の言葉に続けて話す長門の顔に、微かに希望の色が差しているように思えた。
つまりハルヒだけはここでも世界をどうこうできちまうってことか?
それならば、元の世界と同じ状態を作り出して、それをよしと思わせれば戻れるかもしれない──
「ということになります。もちろん、涼宮さんの能力云々は推測の域を超えませんが、試してみる価値はあるでしょう。
元の世界との相違点、つまり涼宮さんにあなたの認識がなかったこと、SOS団にあなたが所属していないこと、これがポイントではないかと考えられます。
この二点は障害であり、その克服が目標になります。明日の綿流しは是非あなたにも行って頂いて、涼宮さんの心証を可能な限り良くしてもらいたいのです。
先日の第一印象はあまり好ましいとは言えないものでしたので……。最終目標は涼宮さんにSOS団の入団を許可してもらうことになりますかね」
とりあえず綿流しには学校の連中と行く予定だ、そこは心配ない。けどまあ……
ハルヒが犯人の可能性は半々、か。なるほどね。無理やり引き込まれたはずのSOS団に、今度は俺の方から入団を望むような形になるとはな。皮肉なもんだ。
TIPSを入手しました
≪園崎詩音と涼宮ハルヒ≫
≪開演≫
[*前へ][次へ#]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!