[携帯モード] [URL送信]

雪少年
おかえり





恭弥が氷になってから数週間が経つ

俺は奇妙な夢を見た






広い部屋で寝ている小さい俺

家には誰もいない


ボッ


急に炎が小さい俺を包み込む

俺は泣き喚いていた



ハッと気がつくと場面が変わる



ジョットが座っていて、その横に白い着物を着たさっきよりは大きくなった俺


「綱吉、炎は好きか?」

「それ、俺に向かって言うわけ?嫌いに決まってるじゃん」


むっとする俺

するとジョットはグローブをつけた手から炎を出す

小さい俺はその炎に見とれていた


「綺麗・・・」

「この炎はな、普通の炎ではない。この炎に溶かせないものなどはない、浄化できないものは無い」

「ふへぇ〜・・・」


じぃ〜っとその炎を見つめている


「お前にも力がある。それはお前が使いたいときに使えばいい」

「氷のこと?」


首をかしげている俺


「今はいい。その内分かるが良い」


フッと笑い、俺の頭を撫でている









ぱちりと目が覚めた


「ジョット・・・?」


優しい人間

俺の記憶では夢で見たように仲良かった記憶はあまりない


「あっ!」


声を上げた

何かが分かりそうな気がするのだ


図書館の本に書いてあったことを思い出す

『雪女の氷は熱で溶ける。熱以外では溶けない』


その時は、俺の氷は熱じゃ溶かせないからと気に留めなかった


そして夢で見たジョットの言ったこと

『お前にも力がある』『この炎に溶かせないものなどない』


あの時は意味が分からなかった


「俺も、炎を出せるって事・・・?」


ジョットと同じ力があるのかもしれない


「でもどうやって・・・」


炎のともし方が分からない

自然と目が手袋に移る


「これじゃぁ無理・・・だよな」


諦めるが、なんでかこの方法があっているような気もする

いちかばちか

手袋に願いをかける


「炎よともれ・・・!」


しかし炎はともらない


「・・・っんでだよ」


ずるずるとしゃがみこむ

やはり駄目なのか・・・。


「俺は恭弥を・・っ元に戻すんだっ」


涙がこぼれる

頬から垂れる水は次第に凍っていく

ぽたぽたと手袋に落ちる


その瞬間


ぼっと手袋に火がともる


「!?」


手袋の形が代わり、グローブになった

口が緩んだ

これで恭弥がとける!


恭弥に近づき、その手で触れる



しゅううぅぅぅ〜



氷が溶けていく

俺はすぐに手を離した

また凍らせてしまうかもしれないからだ


(良かった・・・。でもなんで炎をともしているのに俺は何も感じない?)


自分は雪少年なのに熱で溶けないことに不思議を感じた

だが、そんなことはすぐに忘れた


恭弥の手がピクリと動いた

徐々に溶けていく氷


そして


「綱吉・・・」


氷が完全に溶けた

恭弥が俺に触れようとした

俺はまだそれが怖くてさっと後ろへ下がった


「綱吉!」

「俺に触るとまた凍っちゃうよ!」


近づいてくる恭弥から必死に逃げる

だが、すぐに掴まった


ぎゅうっと抱きしめられた

優しく


「君が望まなければ僕は凍らない」

「あ・・・」


俺に触れても凍らない

恭弥を凍らせたときの壊れた俺は、恭弥を凍らそうとしていた

コントロールはできてたのだ

ただ人に触れるのが怖くてずっと逃げていただけだったのだ


「君は化け物なんかじゃない」

「俺を・・・許すの?恭弥を、こお、らせてしまったのに・・・」


涙が止まらない

いつのまに手にともる炎は消えていた


「君は何も悪いことをしていない」


どきんと心がはねた


「ただいま綱吉。1人にしてごめんね」

「・・・お、おかえ・・り」


しゅううぅぅぅ


溶けていく

溶けていく

体が熱を持っていく







氷が溶けていく






[*前へ][次へ#]

12/15ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!