物語【三竦み編】
月見酔い V
「…こっちを向け。」
再度、飛影に声を掛けられた。
肩は飛影に掴まれたまま。
オレは不自然にテーブルへ視線を向けたまま、飛影の方を見れないでいる。
表情が作れない。
身体が、動かない―…
握る手に力を入れ体重を掛け過ぎた所為で、ガタンと音を立てて日本酒の瓶が傾いた。
「…あっ…」
オレがしまったと思うのと同時に、飛影が背後から手を伸ばして瓶を支えてくれた。
そしてオレの手から瓶を抜き取り、少し離れた場所に置き直す。
急に見えた飛影の腕に、身体の熱が高まったのを感じる。
飛影の腕を照らす月明かりという効果の所為だと…思ってしまいたい…
「お前は何をそんなに緊張している。」
そう告げられて、オレの頬に飛影の手が触れた。
面白い様に反応して、勝手に身体が跳ねる。
未だ不自然に飛影から視線を逸らすオレの顔をゆっくりと促され、飛影の方へと向けさせられた。
―ダメだ…オレ、どんな顔をして…
「…んっ」
―頭が…真っ白になった―…
飛影に口付けられている…
そう直ぐに認識したものの。
余りの衝撃と刺激に、頭が回らない。
“ちょっと待って”と言いたくて、僅かに開けた口に飛影の熱い舌が入り込んだ。
驚いて引っ込んだ己のそれを、強く吸われ絡め取られた。
―ダ…メだ…おかしくなる…
頭の片隅で警鐘が鳴った。
逃げ出したいと、本気で思った。
けれど、指先は完全に痺れていて、言う事を聞かない。
頭を振って逃げ出そうとすれば、首元に飛影の手が入り込んで少しの動きも許されなかった。
呼吸をも奪う程の口付け。
苦しいと思った瞬間に、角度を変えられ、その合間にだけ許された呼吸。
「…っ……ふっ…」
余りにも己のものとは到底思いたく無い甘い息が鼻から抜けた。
…おかしい。
飛影との口付けは何度と無くしてきた。
翻弄されるのも常の事。
けれど。
―ここまでの感覚は、知らない―…
背中に甘い痺れが走る。
それが腰にまで響く。
口を塞がれていなければ、嬌声を上げていたかも知れない。
…それ程の、感覚。
一年振りだから…?
本当に…おかしくなる―…
刺激を散らす為に、固く瞑っていた目を開けた。
そのまま目の前の飛影は見ずに、横目でテーブルへと視線を送る。
オレの飲み掛けの杯に、月明かりがうっすらと浮かんでいる。
その光景に集中しようと思い立った時、口付けが止んだ。
乱れた呼吸のまま、自然と視線を飛影に向けてしまって…
「やっと見たな、蔵馬。」
妖しく笑う飛影と目が合う。
強い紅の瞳に、一瞬で捕われた―…
「…あっ…」
痛い程、胸が鳴った。
声を出してしまう程、痛い鼓動。
「…んぅっ……っ」
再度口付けられて、身体が大きく跳ねた。
腰を抱き寄せられて、既に自身が勃ち上がっている事を知る。
足がガクガクと震えていて。
全身に力が入らなくなっていた。
―おか…しい……こんな…感覚……
止めて欲しい…そう思って、痺れる指先に力を入れてみても、只飛影に縋り付くだけになった。
麻痺し切った唇を舐め上げられ、背中に走る甘い感覚が増す。
ひたすら…飛影の舌が熱い―…
感覚を失くした唇は、閉じる事を忘れて。
口内に溜まった唾液が口の端から流れて喉元を伝う。
喉元に伝った唾液を飛影は舌で掬い、再度オレの口内に侵入した。
唾液を流した事を戒める様に…
閉じる事を知らない今のオレの口内は、あっさりと飛影を受け入れてしまう。
止めて欲しいと思っていても…
脳内に霞が掛かる。
時折火花が見える。
飛影の指先が、厭らしく背中を辿ってゆく。
それだけでも、身体が大きく踊る。
―おか…しく…な…る……っ
一際、頭の中で警鐘が大きく響いた。
―このまま…で、オレ……達って…しまう…?!
朦朧とする頭の片隅に浮かんだ懸念。
まさか…でも…こ…の…感覚…
慌てて飛影に抱えられている身体を捻る。
それを押さえ込むかの様に、飛影の腕に力が込められた。
ますます密着する身体。
ますます動き回る飛影の舌。
「…んぅ……っ」
身体の痙攣が激しくなった。
身体が熱い。
―ダメだ、これ以上…っ
「…や…め…っ……飛……っ」
「…その理由は…?」
意地悪い言葉を放っただけで、飛影の口付けは止んではくれない。
力を失くした己の舌が、飛影のそれによっていい様に遊ばれている。
それでもゆるゆると逃げようとした己の舌を、飛影は強く吸い出して。
捕えられた舌に…甘く、噛み付かれた―…
瞬間。
背中に過ぎる快感が走った。
「――っ!!」
声を上げる事も敵わず、身体が一際大きく跳ねた。
至る処が痙攣を繰り返している。
―…う…そだ―…
全身の力が抜け切って。
オレは飛影に縋る様に凭れ掛かった―…
(Wへ続く…)
★あとがき★
.................................爆照///
い、言い訳は日記にて……orz///
お読み下さって有難うございました^^
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