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五日目
前の日にクラトスにマッサージしてもらったけど、この日は朝から体(とくに肩と腕)が痛かった。きんにくつうって言うらしい。

ソファでせっせと自分でマッサージ(クラトスのに比べたらあまり気持ちよくなかったから、効いてなかったかも)してたら「村に食料を買い出しに行くが、来るか?」って言ったから、「行く!」って答えた。ひとりで待ってるのは好きじゃない。
獣人だってバレないように耳としっぽを隠してクラトスと出かけた。獣人だってバレたら、捕まって売られたりするらしい。だからクラトスは「離れるな」って言ってた。

初めて人間の村に入ったオレは、何もかもおもしろくてきょろきょろしてた。
クラトスの周りをぐるぐる回りながら「あれ何?」って聞きまくった。
そしたら「ちょっと落ち着きなさい」ってクラトスに手を掴まれた。それでもきょろきょろしてたら、不思議な光景が目に入った。
男の人と女の人が口をくっつけ合ってた。「あれ何?」ってクラトスに聞いたら「好きな者どうしがする行為だ」って言った(ホントはキスって言うんだよな)。
ふーん、と思ってちょっと考えた。「クラトス」ってつないでる手を引っ張って、オレは背伸びしてクラトスの口にちゅ、ってした。
クラトスはちょっと止まって(何でだろ?)その後少し笑って頭をなでてくれた。好きっていうの伝わったかな?クラトス大好きだからオレもしたいな、って思ったんだ。

お店にはたくさん食べ物があってびっくりした。でも勝手に持っていっちゃダメなんだって。お金と交換だ。

このお出かけでオレが文字の読み書きができないことがバレた(勉強キライ)。でもそれじゃ買い物とかできないし、人間の町には行けないってクラトスが言うからガンバることにした。
この日から夜は勉強タイムだ。とりあえずこうやって日記を書けるようにまでなった。まだいっぱい間違ってクラトスに赤で直されるけど…。


†††


前日にマッサージはしたがやはり筋肉痛は避けられなかったようだ。朝食の後ロイドはソファーで腕をマッサージしていた。

そろそろ食料の買出しを、と思ってロイドに声をかけた。食料だけならば近くの村で事足りるし、街に行くほど危険は少ないと判断しての事だ。
それでもリスクが無い訳ではない。帽子と長めのマントで耳と尻尾を隠して村へと出かけた。

人間の集落に入るのは初めてなのだろう。ロイドは物珍しそうに私の周りをウロウロしながら次から次へと「あれ何?」と質問をしてきた。
さすがの落ち着きの無さにロイドの手を掴んで大人しくさせる。それでも周りをキョロキョロと見渡し、質問の手を休めなかったが。
その時「あれ何?」と男女がキスをしているのを指差して聞いてきた。こんな往来で(しかもロイドのいる前で)キスをしている奴等を切り捨ててやりたいと、この時程思った事はなかった。あたりさわりなく「好きな者同士がする行為だ」
と言った。
そうするとロイドはいきなり繋いでいる手を引っ張って口づけてきた。
流石に私は固まった。やはりきちんと「異性同士で・恋愛で」と言うべきだったか。しかし「親愛」と言う意味でキスする事もある。きっとロイドはそれで私にキスしてくれたのだ。
なんとも直球な「好き」の表現に私は笑みを隠せずにロイドの頭をなでた。

ずっと森で育ってきたせいかロイドは「買い物」や「お金」という概念がないようだ。そして文字の読み書きも出来ない事も判明した。それではこれから生活していくのに不自由すぎる。この日から夜は文字や計算の勉強をする事にした。

ロイドの頑張りは日に日に目に見えてきた。今ではこうして日記も書ける様になったのだから大したものだ。それでもまだまだ間違いが多くて赤ペンはもうしばらく放せそうにないがな。


四日目 六日目


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