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二日目(前編)
朝、少しさむくて目をさました。クラトスのベッドに丸くなって寝てたらしい。
クラトスはいなかった。
下にいってもクラトスはいなかった。どこかへ行ったらしい。
今のうちだ、と思って家を出た。ここにいなさいって言われたのはうれしかったけど、メイワクになると思ったから。

森に着いて少ししたらまた雨がふってきた。木のくぼみに座り込んで雨やどりした。
さむくて、さみしくて、ちょっと泣いたのはクラトスにはナイショだ。
また眠くなってうとうとしてたら声が聞こえた。びっくりしてきょろきょろしたら、クラトスがオレの名前を呼びながらこっちに来るのが見えた。にげようとあわててくぼみから出たら、すぐに見つかってクラトスにつかまった。

「ロイド、どこに行ったかと…!」

そう言ったクラトスの顔は青ざめて、オレをつかんでる手は冷たかった。
だってメイワクになるって言ったら、オレをぎゅってして「メイワクじゃない」って言ってくれた。
昨日はあんなにあったかかったクラトスの体は、今は冷たくてぐっしょりぬれてた。
ずっと探してくれてたことがわかった。涙が出てきた。
いきなり泣き出したオレを見てクラトスがあせった。さむいのか、とか腹がへったのか、とかいろいろ言ってて、オレはちがうって首をふってクラトスにしがみついた。
ごめんなさいって言ったら頭をなでてくれて、ほっとしてまた泣いた。
「帰るぞ?」ってクラトスが言った。オレはしがみついたままうん、って言った。
そのあと、クラトスはオレを抱っこして、家に帰った。抱っこされてるあいだに、冷たかったクラトスの体があったかくなってきた。
それがうれしくてまた泣いた。なんか泣いてばっかりだ。

その日からクラトスはオレの世界一大好きな人になった。


†††


温かい、と思いながら目が覚めた。腕の中にはロイドがいたから当たり前だ。
私はいつも通り剣の稽古をすべく、ロイドを起こさないように外に出た。

しかしそれが間違いだった。

戻ってくるとどこにもロイドの姿はなく、ベッドも冷え切っていた。外は雨が降り出していたが構わず私はロイドを探しに出た。
ロイドがいなくなった理由などどうでもよかった。ただあの子がいないというだけで苦しかった。あの子がこの雨の中辛い思いをしているのではないかと思うと胸が張り裂けそうだった。

必死でロイドの名を呼び探し回っていると、木の根元からロイドが飛び出したのが見えなりふり構わず捕まえた。掴んだロイドの腕は服の上からでも解るほど冷え切っていた。
どこに行ったかと、と言えばロイドは「だって迷惑になる…」と言った。迷惑であれば昨日「ここにいろ」なんて言うはずがない。
ロイドを抱き締めてそう言えばいきなり泣き出した。さすがに子どもに泣かれるのには慣れていない。理由もわからず、かと言ってどうしていいかも分からない私は思い付く限りの理由(寒いのかとか腹が減ったのかとか)をロイドに問うことしか出来なかった。
しかしロイドはどれにも違うと首をふる。そしてしがみついてきたかと思えば小さな声で「ごめんなさい」と言った。
謝る事など何もないというのに…優しく頭を撫でたらまた泣き出して私は苦笑するしかなかった。
「帰るぞ?」と言えばロイドはそのまま頷いてくれた。それだけの事にひどく安心している自分が可笑しく思えた。会ってまだ1日と経っていないのに、私の中でロイドの存在はかなり大きなものになっていた。
ロイドを抱き上げて家路を辿る間にもロイドは思い出したように泣き続けた。

その日からロイドは私の生きる意味、世界一大切な存在になった。




一日目 二日目(後編)


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