BirthDay 5
ユアンにも報告するという事で二人はシルヴァラントベースへと向かった。道中会話を交わす事は無く、ただノイシュに揺られながらお互いの体温を感じ合った。
シルヴァラントベースに着いた二人はすぐにユアンの執務室へと通された。ここで二人の事を知らない者はいないのですっかり顔パスだ。
執務室に入るとユアンは書類にサインする手を止めずに一瞥し、何か用か、とそのまま仕事を続ける。
「デリス・カーラーンについてだが…」
クラトスがそう言うとロイドはつい俯いてしまう。少しでも気を抜くとまた涙がこぼれそうになる。
「…それならもう人員を手配してある」
『………は?』
予想外のユアンの言葉に驚きをかけせず、親子揃ってマヌケな声が出てしまった。
ユアンは面倒くさいという溜め息をつき、応接用のソファに座るよう二人に促しながら自分もその向かいに座る。
「人員とは…どういう事だ…?」
先程のユアンの発言にクラトスは些か動揺が隠しきれないでいた。
そんなクラトスの心情などお構いなしにユアンは口を開いた。
「どうせ責任をとるだの罪を償うだのでお前が行くと言い出すのだろう」
「っ…?!」
的確な答えにクラトスは固まった。相変わらず変な所で鋭い。その鋭さをもっと他の場面で活用できないものか…
「罪を償うと言うのなら、まずは目の前にいるヤツを泣かせるのはやめるのだな」
「な…っ、なんで知ってんだ?!」
「…鏡を見てみろ」
ロイドはユアンに言われて壁に掛けられている鏡へと自分の顔を見に行く。
その間に、とユアンは話を進める。
「あの星を管理していくのにはかなりの時間が必要になる。一度マナを解放したお前の身体がどれだけもつと言うのだ?」
「………」
「それにお前は何でも一人で背負いすぎ――「うわっ、なんだこれーっ!」
「うるさいぞっ!」
真剣な話をしている最中にいきなり叫ばれてさすがにユアンは声を荒げた。
しかしロイドには今の自分の状況の方が重要だった。
「だって…目は真っ赤だし、泣いた跡目一杯残ってるし…かっこ悪い…」
ユアンは溜め息をつきながら部下に濡れタオルを出してやるように伝える。ついでにそんなロイドを可愛いと思っている親バカにトマトをぶつけてやれと付け加えながら。
だから何故そういう変な所で鋭いのだとクラトスが文句を言うと、顔に出ているとあっさりと返されてしまった。
とりあえず、とユアンは話を進める。
「お前をデリス・カーラーンに行かせる訳にはいかん」
その代わりここで向こうに指示を出してもらうからな、ときっちり仕事も押し付けて。
それでもこの事はクラトスにもロイドにも嬉しい提案だった。
「まったく…もう少し周りの心情も考えろ」
「すまない…ありがとう…」
クラトスが素直に礼を述べるとユアンは奇妙な顔をした。なんだ?と問えばお前から礼の言葉が出るといささか気持ちが悪いと言った。何とも失礼な男だろうか。
その間もロイドは鏡の前で自分の顔と格闘していた。目が赤いのがとれないとぶつぶつ言っている。
「お前、ついでに息子を再教育した方がいい」
「…そうだな」
どうもまだ不満なのか顔を拭いながらロイドはクラトスの側に戻る。
「んー…赤いのとれない…」
「それは無理だ、諦めなさい」
ロイドは不服そうに頬を膨らませるがどうしようもないのは仕方がない。
とりあえずなだめて、今後の予定の打ち合わせやデリス・カーラーン行きを志願してくれた者達への挨拶を済ませた。
もう遅いから今日は泊まっていけと、ユアンはロイドを空いている部屋へと案内した。クラトスは何やら話があると言われて連れて行かれてしまったが。
ベッドに潜りながらロイドは1日を振り返ってみる。今日は色んな事がありすぎた。むしろ今日の出来事は全部夢なんじゃないかと思ってしまうくらいに。
(でも…夢じゃない…)
クラトスはずっと側にいてくれるし、家に帰ればあのおっきいケーキも残ってる。何より泣きすぎでもの凄く眠い。
起きたら目赤いのなおってたらいいな、と思いながらロイドは眠りに落ちた。
何があってもお前の側を離れたりしない。私に残された時間は、ロイド、すべてお前のものだ。
END
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