ちびろい3
適度な日差しに過ごしやすい気温。時折吹き抜ける風が気持ちよく、走り回るにも申し分ない広さ。
ピクニックには文句なしのロケーションだ。
「とうさん!あっちいこう!」
「ロイド、ちゃんと前を向いて歩きなさい」
だいじょうぶ!と言った瞬間、ロイドは見事に転んだ。
クラトスはお約束過ぎる息子に苦笑しながら、抱き起こして汚れを払ってやる。
「ありがとっ!とうさん」
にへっ。
それからお礼のちゅっ。
そんな危なっかしくも愛しい息子の小さな手を握り、クラトスは顔を綻ばせたのだった。
「よーっし、ノイシュ!とうさん!あっちの川まで競走な!」
「ワフッ!」
…よーい…ドン!
展開に付いていけないクラトスを余所に、ロイドとノイシュは川へと駆け出して行った。
(あぁ、)
幸せだ
「とーさーん!はやくー!」
競走だって言ったのにー!と少しむくれながら叫ぶ息子に苦笑しながら、クラトスは二人の元に急いだ。
「いっただっきまーす♪」
シートに座り、ロイドは目の前に広がる弁当を頬張る。あの後もノイシュと一緒に走り回ったりじゃれ合ったりしたからお腹はペコペコだった。
「うまー♪」
そうか、とクラトスはロイドにミルクを渡す。
オレもう子どもじゃねぇんだけど…とロイドは思ったが、クラトスから見れば今のロイドは幼い子どもそのものだ。
ロイドはまあいいか、とミルクを受け取って一気に飲み干した。
見事、口の周りに白いヒゲを作って。
クラトスは苦笑しつつもロイドの口を丁寧に拭いた。
「ごちそーさま♪」
腹いっぱーい!とロイドはクラトスにもたれかかった。
お腹いっぱいで、あったかくて、心地良い風も吹いていて…
案の定、ロイドはうつらうつらと船を漕ぎ始めている。
「ロイド、眠たいのなら寝ても構わんぞ」
クラトスはそう言うとロイドを膝に乗せて抱き締めた。
突然の事でロイドは目を白黒させたが、すぐにまた睡魔が襲ってくる。頭を撫でてくれる父の手がすごく心地良い。
「んー…しゅこし…らけ…」
余程き気持ちよかったのかロイドはすぐに寝入ってしまった。
そしてそんなロイドにつられるかの様にクラトスも瞳を閉じたのだった。
「…ぅに……?」
目を覚ましたロイドは目を擦りながらクラトスを見上げた。
(とうさん、寝てる…)
そしてこっそりイタズラを思い付く。
クラトスを起こさないようにゆっくりと膝から降り、ノイシュの後ろに隠れる。
もちろんノイシュが吠えないように、しーっ、と口止めをして。
ロイドはビックリするだろうクラトスを想像して息を殺した。
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