師弟の遊戯

小僧を見かけたのは、紫杏とあった次の日だった。


すぐに、声をかければどうした、と振り返る小僧。


「ん?いやー、小僧はこれから暇か?」


「…暇じゃないが、つきあってやる時間はあるぞ」


にやりと口角をあげる小僧は昔となんら変わってない。つーか、本当にでかくなったよな。


「本当か!?じゃあ、昔やったあのペカーって光るやつやろうぜ!」


「ああ、あれか。ペイント弾だな」


「ああ!」


「別に、いまさらペイント弾を使う必要はねえだろ」


「まあまあ。そのほうが、小僧だって思いっきりやれるだろ?」


「フッ、実弾でも今なら本気でやるぞ?」


「ハハ…、」


ニヤリと口角をあげる小僧に苦笑を洩らす。小僧が本気になったらきっと俺だってあぶないし、ツナだって結構あぶねーと思うんだよな。
それに、ただ修行がしたいってだけじゃねえから…。つっても、楽しみだけどな!


「じゃ、さっそく行こうぜ!」


「ああ」


俺達は、それぞれの武器を手にとって鍛練場の一つである剣道場へと向かった。懐かしいのなー。もう、あの特訓したときから10年もたってるんだぜ?


「ここに来るのは久しぶりだな」


「ハハ。もうあれから10年だ」


畳の臭いを腹の奥に吸い込みながら、部屋の中央まで入っていく。そして、真ん中で小僧と正面から対峙した。


「…さて。いつでもいいぞ?」


小僧は笑う。俺も笑う。


さて、と。始めるか。


俺は時雨金時をひとふるいしてし竹刀から刀に変える。空気がピンと張りつめた。静寂が部屋を支配する。


互いに一定の距離を保ったまましばらくの間睨みあい。間合いを十分にとってはいる。でも、相手は銃だ。それに、レオンだっている。
一気に緊張がかけめるぐ。それと同時に高揚感も体を支配していく。いつかに、小僧に言われたことがある。お前は根っからの殺し屋だと。


そのときは分からなかったけど、こういう風に戦っているとなんとなくその意味がわかる気がする。つまり、やっぱり勝負は楽しいってことなのな。


「行くぜ」


時雨金時を構える。そして、二人同時にその場を飛び上がった。






どれくらい攻防が続いているだろうか。小僧も俺もかすり傷一つ負っていない。それは、俺が峰で切りかかっているからというのもあるんだけど、やっぱ小僧は強いのな。
掠りはしても、絶対によけられる。今まででどれも致命傷を与えられた感覚はない。


俺の方は、昔のようにペカーっと光るわけではなく、ところどころにホタルぐらいの光りがあるだけ。


「で?なんで俺を誘ったんだ」


どれくらい続けていただろうか。俺の攻撃をよけながら小僧は口を開いた。小僧が今までいた場所に俺の刃が通り抜ける。すぐに振り返って、小僧と間合いをとった。その瞬間に、足元に堕ちる銃弾。


「ハハ。なんだ。気付かれてたのかー」


「俺を誰だと思ってやがる」


小僧の銃から銃弾が飛び出してくる。それを刀で受け流し、下段から刀を振り上げる。なんなく交わされ、すぐに飛びのけば、さきほどまでいた場所に銃弾がのめりこんだ。


「昨日、紫杏にあったぜ」


「……そうか」


表情をうかがうも、変化はない。でも、きっと小僧は紫杏のことは嫌ってねえと思うんだよな。まとってる空気がフワーってなってて、紫杏もふわふわーって感じなんだよ。


「で?それがどうした」


「小僧の部屋にいたから声をかけたんだけどよ。紫杏泣いてたんだぜ?」


その光景を思い出して苦笑する。声をあげて泣かないから余計に子供らしくない。ただ静かにそこで涙を流していた。俺が知ってる子供ってのはもっとにぎやかなんだけどな。


「そうか」


呟いた言葉は小さく、聞き逃してしまいそうなそれ。水を巻き込みながら、下段から刀を振り上げ水を飛ばす。


「小僧に会いたいって言ってたぜ。だから、会いに行くかってったら行かねえって言うんだ」


飛ばした水が頭上から降り注ぎ、目を開けるのも一苦労な、滝のようになった。その滝の切れ目から、3発飛んでくる弾。それを全てよける。


「それで、何も言うなって。なあ、会わねえのか?」


小僧が紫杏を避けているのは知っている。多分、パーティーがあったぐらいから様子が変だった。紫杏は俺の妹みたいな感じだし、たけにいって呼ばれているし、ほっとけねえのな。


「お前には関係ねえぞ」


「それが、関係大アリなのな」


「ハッ、知った風な口聞きやがって」


「…紫杏、笑ったのな」


その言葉を言った途端。小僧は動きを止めた。だから、俺も動きを止めて、正面から対峙する。荒い息を一つ吐き出して息を整える。小僧を見れば、まだなんともないというようだった。


「ありがとうっつって、笑った。まだ、5才だぜ?」


泣きそうな顔で笑う紫杏は見てられなかった。5歳でそんな顔はしなくていい。天然だなんだといわれてるけど、それぐらいは分かる。我慢してるんだ。紫杏は。わがままも何も言わないでただじっと耐えてるんだ。


「分かってんだ、ろ!」


「!!」


俺は走り出した。刀を中段で構えていっきに薙ぎ払う。しかしそれは後少しというところでよけられる。それと同時に飛んでくる弾は、よけるまでもなくぶれていた。


「動揺してんのか?ぶれてるぜ?」


「ハッ、無駄口叩いてると、ハチの巣だぞ」


鼻で笑う小僧は、そう言うと同時に銃を放った。その一発は腕を掠りあとの一発は頬をかすった。


そして、俺達は最終決着へと持ち込んでいく。



「時雨蒼燕流、攻式―――」


「カオスショット!」




同時に繰り出された技。技の衝突によって部屋全体が揺らぐ。
頭上から雨が降り注ぎ、体を濡らしていく。俺に有利なはずのテリトリーだ。


「ハハ、やっぱ小僧は強いのな!」


「俺もあぶなかったぞ。あそこでレオンを出さなかったらどうなってたかわからなかったからな」


そういうと、リボーンはさっそうと部屋を出ていった。俺はその場に仰向けになりさっきまでの戦いを思い出している。


あーあ、負けたのは悔しいなー…。よしっ。もっと修行して今度は絶対に小僧に勝つ。


ん?そういえば、なんで小僧は紫杏を避けてるんだ?


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