次に会ったのは、骸だった。骸に会うのは久しぶりな気がする。この前、クロームさんに連れられて行ったときに、会ったっきりだったと思う。 「おや、アルコバレーノに紫杏じゃないですか」 [ひさしぶり] 「ええ。お久しぶりですね。紫杏」 「ああ!お前、あの時の奴だぴょん!」 ビシッと指をさされて叫ばれる。千種さんは眼鏡を指で押し上げてああ。とうなずいただけだった。まったくの正反対な反応に面食らう。いや、もともとこんな性格だったけど。 [かばん、ありがと] 「気にいったんだ」 千種さんに、お礼を言った。今もそのかばんは持っているからそれを見せて大きくうなずいて見せた。そうすれば、少しだけ千種さんの雰囲気が柔らかくなった気がした。 それから、犬さんが千種さんをからかい始め、千種さんと犬さんの喧嘩が始まった。といっても、犬さんが一方的に怒鳴っていて、千種さんはたまにぼそりと反論するだけだけど。 それを観察していたから、骸とリボーンの間で交わされた会話なんて知らなかった。 「クフフ。死神が人間になろうとしていると聞いたのですが…。デマだったようですね」 「なんの話だ」 「いえ。随分腐抜けたと聞いたものですから」 クフフ、と再び笑う骸。しかし、リボーンは動じることなく相手を見返すだけだった。 二人が会話しているのを見つけて、かけよると骸が膝をつき視線を合わせてくれた。 「元気そうでなによりです」 そういって、頬を撫でられる。男の人なのに色気を感じるから不思議だった。思わず赤面していると、おやおや、と苦笑された。 [くろーむさんは?] 「彼女は今日はお休みです。今度、会いに行くように言っておきますね」 その言葉にこくんと一つうなずいて返す。ようやくおさまってくれた熱に安堵しつつ、リボーンを見上げると、なんだか難しい顔をしているようだった。わずかだけど、口元が下がっている。 リボーンのズボンのすそを引くと、私とやっと目があった。 「…紫杏。骸も守護者だぞ」 「なんの話です?」 「仕事調査をしてるんだぞ」 [なんのしゅごしゃ?] リボーンの質問で意味がわからなかったようだった骸に、質問してみる。未だに膝をついたままだった骸の前にスケッチブックを出すと、ああ、なるほどと言って指輪を見せてくれた。 「僕は霧、ですよ」 見せてくれた指はは、たけにいのよりも濃い青色をしていた。そして、他の人と同じように雲のようなものがいくつかある。これが、霧のマークなんだとおもう。 「使命は、実態のつかめぬ幻影。無いものを在るものとし、在るものを無いものとすることで敵を惑わし、ファミリーの実態をつかませないまやかしの幻影となることだぞ」 リボーンが言った言葉に、骸は自嘲気味に笑みを見せた。 「なりたくてなってるわけではありませんよ」 「…まだそんなこと言ってやがんのか。いい加減諦めたらどうだ?」 「クフフ、隙あらばいつだってのっとって見せますよ」 骸の瞳が妖しげに細められた。それを見て、リボーンは口角をあげる。 「これから、そんな暇もなくなるほど忙しくなるかもしれねえぞ」 「おや、何かしでかすのですか?マフィア風情が」 「さあな。俺の予感だ。あまり良い気はしねえ、な」 リボーンの言葉に、骸はそうですかと言って立ち上がった。それに伴い、リボーンは私を抱き上げる。そして、歩き始めた。リボーンの肩越しに骸の方をみると、犬さんが手を振っていて、骸は笑みを浮かべていた。 私は、彼らに手を小さくふった。 |