Let’s仕事調査!山本ver.

りょうにいと別れ、再び廊下を歩いていると、後ろからリボーンが誰かに呼び止められた。その呼び声に、リボーンは足を止め振り返る。


「小僧!」


結構なスピードで走ってくるのはたけにいだった。たけにいは大きく手を振りながら近寄ってくる。その傍には中型の犬がいた。


「山本…。なんでそいつも一緒なんだ?」


「ああ、今散歩中だったんだ!な、次郎」


ワンっと吠えて次郎と呼ばれた犬は思いっきりたけにいに飛びついた。たけにいはそれをなんなく受け止めるとお腹や頭や背中などを撫でてやっている。それにたいしても嬉しそうにちぎれんばかりに尻尾を振っている次郎は可愛かった。


私も、触ってみたくなって、リボーンを見上げると、通じたのかその場で降ろしてくれた。それに気付いた次郎がこっちを向く。


目線がほとんど同じ次郎。17歳のときだったら、立っていれば必ず視線の下にあった目が同じような高さでじっとこっちを見つめていた。


予想外のことに思わず、じり、と後ずさる。


たけにいとじゃれているときは普通の大きさに感じたというのに、今目の前にいる犬はとても大きく感じた。


「紫杏、次郎って言うんだぜ?次郎。こいつは紫杏だ!」


たけにいがそういった瞬間、次郎が勢いよく尻尾を振ったかと思うと飛びついてきた。たけにいだったら受け止められたその体は、私にとっては襲いかかってくるようなもので、その勢いで私は地面に押し倒された。


そして、次郎はそのまま私の上に乗り、私の顔をなめまわしてくる。それが怖くて顔の前で手をクロスさせてガードしていた。


「ハハハッ、次郎も紫杏が気にいったか」


よかったなーと言って笑うたけにいには申し訳ないけど、はやく次郎を上からどけてほしかった。


足をばたつかせていれば、ふいに上の次郎の気配がなくなり、体を誰かに持ち上げられた。そして、香る珈琲の匂い。


「大丈夫か?」


見れば、リボーンがハンカチを持って私を抱き上げていた。そして、持っていたハンカチで私の顔を拭いて行く。ぐいぐいと拭われていき、ちょっと頬が痛かったけど我慢した。だって次郎の唾液で顔がべとべとになっていたんだもん。


「きれいになったな」


コクン、と一つうなずいて返事をする。リボーンに抱きあげられたまま次郎を見下ろせば私の方を見上げて、つぶらな瞳で降りてこないの?と訴えかけていた。それに、うっ、と詰まらせる。昔あった某CМの犬のようだと思った。
つぶらな瞳をするのは動物として卑怯だと思う。良心の呵責に、もう一度降りるべきかと頭を悩ませ始めた時、リボーンが私を抱えなおした。


「山本。体の大きさを考えろ」


「ハハッ、悪いな!」


たいして、悪びれた様子もなく謝るたけにい。でも、憎めないのはきっとたけにいの役得だろう。


[たけにいもしゅごしゃ?]


と、そこで、さっきまでの職業調査を思い出して、たけにいにも質問してみる。りょうにいは晴れだった。


「俺は、雨の守護者だぜ]


そう言って、リングを見せてくれた。それは、りょうにいとは違い水色の石を使っていた。そして、その中にはりょうにいは晴れマークだったけど、たけにいは雫の形があった。


[しめいは?]


「しめい?ああ。使命な」


たけにいは、リングを自分の方に引き寄せると、しずかに拳を握った。でも、りょうにいの時のように炎は出なかった。きっと、リングと同じような青い炎が出るんだと思う。


「全てを洗い流す恵みの村雨。戦いを清算し、流れた血を洗い流す鎮魂歌(レクイエム)の雨」


静かに告げたたけにいは、普段のたけにいと違った雰囲気を持っていた。静かなる闘志。まさに村雨。
それが、きっと仕事モード…。真剣な瞳をもつたけにいの目には、強い覚悟のようなものが見えた。


「雨の炎は沈静なんだぜ?だから、この炎に触れたらしばらく痺れたみたいに動きにくくなるんだ」


へえ。そんな力が。とうなずいてみせると、たけにいはさっきの真剣な顔とは一変して、破顔して見せた。そして、大きな手で私の頭をぐしゃぐしゃに撫でる。


「じゃあ、俺まだ散歩の途中だから行くな!」


そういって、次郎とともに走り去ってしまった。その後ろ姿を見送ってから、ふと、ランボのことを思い出してリボーンに聞いてみた。


[らんぼのしめいは?]


「アホ牛は雷だぞ。使命は激しい一撃を秘めた雷電。雷電となるだけでなく、ファミリーへのダメージを一手に引き受け、消し去る避雷針だぞ」


避雷針。つまり、ランボが一気に攻撃をうけるということ、だと思うんだけど、それって、つまり…、囮みたいなもの?囮というより、盾、なのかな。


「それだけじゃなくて、アイツは本当にあいつ自身に雷が落ちても効かねえんだぞ」


[なんで?]


「体質だ」


思わず、その言葉に固まってしまった。だって、それって体質って言葉で片付けてしまっていいの?


でも、私の疑問はリボーンに伝えることなく、まあいっかと流してしまうことにした。だって、突っ込んでいいところじゃない気がしたから。


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