新たなる魔法

連れて行かれた場所は、ボンゴレの屋敷で言う談話室のような場所だった。ただ、ボンゴレと違うのは、その部屋には先ほど玄関の前にいた人たちしかおらず、メイドや執事の姿はない。そういえば、メイドさんがヴァリアーのメイドの数は不明だっていってたっけ。


「それじゃあまずは、自己紹介をするわよ〜!」


ハイテンションなオカマさんは腰をくねくねとさせて、どこか背中に花を背負いながら声高だかにいった。


そして、その人は私を椅子の上に座らせるとそれぞれ席についた。そして自己紹介を始めてくれた。ただ、その自己紹介も普通とは少し、というかかなり違い、なんというか、やっぱり記憶からどうやっても忘れることはできなさそうな自己紹介だった。


まず、オカマさん。彼…。彼女?はルッスーリアと言うらしい。この数分だったけど、この中ではまだまともな考え方をしている人だと思う。


次に、頭にティアラを乗せ、金髪の前髪を鼻上ぐらいまで伸ばし、目を完全に隠したおにいさん。しししという特徴的な笑い方をするこの人は、王子らしい。名前はベルフェゴール。ベルと呼べと言われた。


最後に俺、王子だから。とカミングアウトした彼の横にいた黒いカエルのかぶり物をした緑の髪の人は、それに突っ込み、というか毒づいていた。それを聞いたベルがどこからかとりだしたナイフをカエル頭に突き刺している。なのに彼は痛がるどころか、刺さないでくださいよーと間延びした声で答えた。


そんな彼はフランというらしい。


そんな彼らを呆れたように見ていた頭からすっぽりフードをかぶった人は、くだらない、と一言呟いていた。両頬にペイントのしてある彼。フードからのぞく髪は藍色だった。そして、リボーンのレオンのように頭にカエルを載せている。彼は、マーモンだ、と名乗った。金にならないことはしない主義らしい。


そして、次に名乗ったのはあの銀髪の彼だ。名前はお父さんも呼んでいたけど、スクアーロ。う゛お゛おぉい!と唸り声をあげるかのような声はとておも大きく、しかも、どこからともなく彼にむかってグラスが投げつけられた。もちろんグラスは大破。なのに彼は破片を振り払うと、それを投げたであろう人に向かって何しやがる!と怒鳴っていた。


普通、あのスピードでグラスを投げられてすぐに切り返しができる人なんてそうそういないと思う。そして、それを投げたのは、あの赤い瞳の彼だったらしい。


その人の横に控えるように立っている背中に何かを背負っている人は、黒い髪を最大限に立たせ、何かを彷彿とさせる髭を持っている。じとっとした目で見られ、思わず視線をそらしそうになったことで、レヴィだ。の一言。そして、ボスに迷惑をかけたら承知しない、とすごまれてしまった。


そして、最後が彼。ここのボスらしい人。上座に座っているその人は、退屈そうに腕を組み目を閉じていたが、全員が自己紹介が終わるのを聞き終わると目を開けた。そして、視線がかち会う。


「…ザンザスだ」


低く呟かれた言葉。きっとそれが名前なのだろう。獣のように獰猛な瞳をもつこの人は、リボーンともお父さんとも違った何かを感じさせる。


「ここではテメエの面倒はテメエで見ろ。泣きわめいたりうるさくしやがったらあいつのガキだろうがカッ消す」


ゆっくりと立ち上がる彼は。肩にかけているだけのコートを翻してこちらへ近づいてくる。近づいてくると言うより、私が扉に近い位置にいるからそう感じるだけで、部屋を出ようとしているんだと思う。


「あとはカスどもに聞け」


横を通り過ぎる時に、こちらを見ることなく呟かれた言葉。私は反射的に彼のズボンを掴んでいた。


「あ?」


[おいてくれて、ありがとうございます]


「ハッ、せいぜい死なねえことだな」


赤い瞳で睨むように見降ろされたけど、伝えなければいけないことがあるからそれを書いて見せれば、ちゃんと書き終わるまで待っていてくれた。


そして、最後に嘲笑ともとれるように鼻で笑うと彼は出ていった。


「ししし、お前勇気あるじゃん。ボスを引き留めるなんて」


「確かに、あの怒りんぼのボスが怒らなかったのもビックリですけどねー」


「僕は興味ないよ」


「う゛お゛おぉい!お前、本当に話せなかったのかあ!?」


「んまあ、スクちゃんったら。そんなことを聞いちゃかわいそうでしょー?」


ザンザスさんの後を追って出ていったレヴィさん。それをきっかけに一気に話し始めた彼ら。どれにどう答えればいいの分からなくて固まっていると、目の前に金髪の人が現れた。


「なんでお前お面なんてつけてんの」


いきなり目の前に現れた顔に思わず体を跳ねさせ、顔を退く。なんというか、近いのだ。うん。
そして、お面に手を伸ばそうとするから、外させないようにお面をしっかりと掴んだ。


「何、王子に逆らうの?」


「そんなこと言ったって、先輩だってたいして顔見えないから変わんないじゃないですかー」


「は?カエルかぶってるお前には関係ねえし」


「かぶらせてるのは先輩じゃないですかー。もう脱いじゃっていいですかー?というか自分の行動も覚えられないなんて、頭やばいんじゃないですかー?」


「カッチーン。スクアーロ作戦隊長。俺、アイツ殺していい?」


「う゛お゛おおぉい!いいわけねえだろお!ここで暴れ回るんじゃねえ!」


それからは、スクアーロさんも加わっての乱闘だった。ナイフが飛び交うわ、それがフランさんの背中に刺さるわ、そして、スクアーロさんの怒声が何よりうるさかった。


「元気よねえ」


いつの間にか隣にいたルッスーリアさん。


[なかいいね]


「ふふふ、そうねえ。さっ!貴女の部屋を用意してあるわあ!荷物もそこに運んであるから」


そう言って、連れ出してくれた。ヴァリアーの屋敷の中はやっぱり広くて、また覚えなきゃいけないなあと思いながら、とりあえず談話室までの行き方をしっかりと記憶するため、左右をきょろきょろしながら歩いていた。



ヴァリアーの屋敷にいたのは、見た目が怖い野獣でも、愉快な家具たちでもなかったけれど、とにかく個性豊かな7人だった。いや、ザンザスさんは野獣のようだったけど。


とりあえず、明日からはここで頑張ろう。追い出されたりしないように。


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