「今日は流れだけやります。主役の二人は指定のテープ貼ってある位置に立ってね」 「………」 「………」 はい、皆様ごきげんよう(白Nに)台本担当、またの名を脚本担当になりました空です!実は今日、祝一回目の文化祭練習の日なんです。 そして何と、推薦の結果決まりました女主はあたしの大親友の風に決まっちゃいましたー!中々見られない組み合わせでしょ? 「おいおい、大丈夫かよアイツ等;」 「あ、匠君。小道具作りどうしたの」 「いや、それよりこっちが気になって、……なあ武?」 「はは;けどよ、あの二人実は似たモン同士だからなー、まあなんとかなるんじゃね?」 あたしが配置確認をしている時、突然後ろからした声に振り返れば、他で作業しているはずの二人、風の幼馴染み匠君と、同居人従兄設定のたけちゃんが様子見に来ていた。 匠君なんて本気で心配してるみたいだし。まあたけちゃんも一応心配してるみたいだけど…。確かに、風と隼人なんて珍しい組み合わせで面白いよね。それに、確かに似た者同士だから、この劇どうなることやら…。そもそも、隼人に演技ができるのかな。 「というか、小道具の調子はどう?」 「ああ、今は何がいるかっていうのを考えてるけど、やっぱ実際に見てみねえとわかんねえよって話になったんだ」 「だから、俺達が偵察に来たのな!」 「あ、そっか。じゃあ、しばらく見てく?」 「ああ」 「おう」 その後は、セリフを二人とも台本片手に棒読みで読みながらも少しずつ場所の確認などをして大体のイメージをつけて行った。 これだったら、台本の微調整とかも必要になってくるかもしれないね。うーん…、やっぱり、配役ミスはぬぐえない気がする…。隼人が、恋とか…。恋愛とか…。やばいっ!想像できなくて笑える!← 大体、この台本のヒロインがマンガに出てくるような完ぺきな子だからありえないんだよね。隼人のキャラじゃない。だからこそ面白いんだけどね。 「つーか、風棒読み…」 匠がボソっと呟いた声が聞こえて思わず苦笑する。 「ハハハ、まあ初めだしこんなもんじゃねえの?」 「衣装ってどうするんだろうな」 「劇っつったら、ドレスとかか?」 あまり劇は見ねえしな。俺。にしても、獄寺は、無愛想だよなー。いつものことだけどな。 「それはねえだろ。これ、普通の日常らしいぜ?」 机の上に置いてあった台本を手にとってパラパラとめくりながらそういった匠。じゃあ、やっぱ制服のままか? 「でも、ドレスを着た風もちょっと見てみたい気がしねえ?」 そう言われて、思わず風の方に視線を向けると、空と何かを話しているところだった。風を見たまま、脳裏でドレスを着た風を想像してみる。 前に、一度小僧や、ツナたちと一緒にディーノさん主催のパーティーに連れて行かれたけど、そこで見たのは本当に世界が違う気がしたよな…。獄寺は平然としてたけどよ。あの空気は、こう、むずがゆくなっちまうというか、ゾワーっとして、ブワッて感じになるんだよな。 でも、そこにいた化粧をして、ドレスを着た女性は皆、キラキラしてはいた。 「きっと、綺麗だよな」 無意識のうちに漏れた声に、過剰に匠が反応していたなんて知らずに、俺はそのまま空と話している風を見ていた。獄寺はその近くで眉間にしわを寄せながら寄ってくる女子をうざったそうにあしらっている。 「なに、……何、お前想像してんだよ」 「匠?」 「…、お前が変なこと想像してたって風に言ってやろー!」 「は!?おい、匠!」 風のもとへ行く匠を止めようと手を伸ばしたがそれは少しの所で届かず、匠は風と空のところへ行ってしまった。 「おい、風!今、武がなー、むがっ!」 こっちをにやりとした笑いを含んだ顔で見てきた。すんでのところで、匠の口に手をやり、その言葉を遮る。 「??武がどうしたの?」 俺と匠を交互に見てくる風に苦笑する。 「いや、なんでもねーよ!な!匠」 「むがふがぐがっ!」 「じゃあ、俺達はもう、小道具のところに戻るな!」 俺の手をはがそうともがいている匠を引きずってそのまま教室を出る。出てからやっと口を離せば、思いっきり息を吸って肩で息をしたあと俺を睨んできた。 (チッ、あと少しだったのによー) (ハハハ;(勘弁してくれ;) |