面倒な絡み辛み

先生がいなくなったことで、生徒達(女子)は一気に武たちの周りに集まりだした。そして、獄寺はやっぱりめんどくさそうに、というか半分キレ気味で。武はいつもの笑顔で少し苦笑気味、かな。


「あいつらすげーな」


「匠。いつもだから…」


あるいみ、予想していたこと。でも、先生が逃げだしたことは予想外。先生が逃げちゃダメでしょ…。とかって思いつつ。


「ちょっと、止めてくる。いろいろと説明しなきゃいけないし」


「おー、おー。会長さんは大変だねえ」


おどけたように言ってのける匠を一睨みしてから女子が集まっている場所へ向かう。空もついてきた。
男子たちは、女子が一気に2人に集まったためか、つまらなさそうな顔をしている。興味ない奴は普通に談笑してるけど。野球部に関しては、武の合宿での出来事やらを自慢げに話して聞かせていた。


「はいはい。アンタらいい加減に席に戻って。転校してきたんだから質問は後」


「えー」


「えーじゃない。転校生にいきなり授業を遅刻にさせる気?」


「いい子ちゃんは、これだから…」


誰かがそうつぶやいたのが聞こえたけど、無視してそのまま女子を全員その場から離れさせる。


「じゃあ、えっと、座席は先生の配慮で会長である私と、副会長である空の近くにそれぞれなったから。わからないことがあったら何でも聞いて」


「なんか、キャラ変わってねえか…。お前」


「ここは学校なので、としか言えないわね」


獄寺に聞こえるほどの大きさでそういえばわからないといったように眉間にしわを寄せた。


「とにかく、どちらがどちらでもいい、らしいわ」


ついでに、私が黒板を背にして中心から左。つまり廊下側の端。空は右、つまりベランダ側で一番後ろの端っこ。


で、あいている席は、空横と、私の右横。


「じゃあ、俺は風の近くにしていいか?」


「ああ、」


「じゃあ、決定だね」


空のその言葉により、私たちが面倒をみる人も決定したということになる。基本は二人で二人を、だけど、授業中とかそういうわけにもいかないから、近くの席の人にしようと二人で言っていた。


まあ、こうなることは予想していたけど。それと…、これから起こるであろう、ことも。


「じゃあ、とりあえず一限目は数学ね」


武が私の隣に座り、獄寺が空の隣に座った。獄寺って、最初っから態度悪いわね…。


そういえば、並中に転校したときって、ツナにがん飛ばしてたっけ…。あれは、恐そうだったな…。


「会長、号令」


「起立…。礼…。着席」


いつもの奴を言ってから、ちらっと隣の席を見たら、武と目があった。それで、武が声もなくニカッと笑ったので、私もつられて、少し笑みをこぼす。
学校にきて、ちゃんと笑うのなんて久しぶりかもしれない…。


「じゃあ、授業始めるよー」


そうやって、始まった授業は夏休み明けということもあってか、転校生がいるということもあってか、少しゆっくりと進んでいった。


そして、授業が終わった瞬間また囲まれる武と獄寺。武はちゃんと相手にするけど、獄寺は相手になんかしてられるかというような感じで盛大に舌打ちした後どこかへと歩いていってしまった。


その後を追うのは空の役目。なんともめんどくさい。一応転校生だから迷うといけないということで数日は付きまとわなきゃいけないらしい。先生にきつく言われた。


「ねー、ねー!どこから来たの?」


「前の学校ってどんなとこ?」


「彼女いるの?」


「何かしてるの?」


「カッコいいねー」


もう、最後のなんて質問じゃないわね。隣で女子が質問しているなか、武は苦笑いを浮かべていた。それすらかっこいいと言ってしまうのだから、武も大変だろう。


その様子をただぼーっと眺めていると、一人の女子と目があった。


「ねえ、ちょっとそこの席座らせて」


なんで疑問形じゃないんだろう…。と思いつつも、反抗していいことがあった覚えなんてないし、別にどうでもよかったから立ち上がれば、武も一緒になって立ち上がった。


だから、反射的に顔を向ければ、武はどこか、つらそうに眉を寄せているから、もう、どうしろって言うんだ。


「…じゃあ、ちょっと空の様子みてくるわね」


適当な理由をつけてから、席を離れる。廊下を出て、開け放たれた窓から再び見てみれば、そこには質問攻めにあって苦笑している武がいた。心の中でごめん、と謝る。
そして、少し胸が痛いのを気づかないふりをして歩き出す。もちろん、空の様子なんて見るつもりはない。あの2人ならなんとかやってるだろうし…。


とりあえず教室にいるわけにはいかなくなったから適当にぶらぶら歩く。ここは結構入り組んでいたりするから新入生は迷いそう…。あ、空も迷ったんだっけ?最近。


そんなことを考えながら歩いていれば、前から見覚えのある3人組が歩いてきた。どこで見たのかな、と考え巡らせていると、前から来た3人のうちの一番端の人にぶつかってしまった。


「あ、すいません」


「痛っ!ちょっと、痛いじゃない!」


えーっと、どこぞのチンピラみたいな?


「ごめんなさい、そこまで強くぶつかったつもりはないんだけど…。そんなに肩が弱かったなんて知らなくて…」


「あら、貴女誰かと思ったら山本君と獄寺君のいとこさんじゃない」


あ、そっか。この人らって、あの武と隼人が学校に弁当を届けに来てくれたときに突っかかってきた3人だ。うわー、嫌な人にぶつかっちゃったな。というか、いとこ設定にしたのってこの時だっけ…。親戚にでもしとけばよかった。


それより、肩の治りはやいのね。


「えっと、何か?」


「あなたのクラスに来たらしいわね。彼ら」


「はあ…、」


「あまり近づかないことですわよ?」


いや、近づくなって言われても会長だし。しばらく面倒みるのも仕事のうちだし…。
と、そのまま(ちゃんと敬語で)伝えれば、怪訝そうな顔をされた。


「そんなの、私(わたくし)どもがしますわ」


あんたらに、なんの世話ができるんだ…。ってちょっと言いそうになっちゃった。あー、嫌だな。この人たちとかかわると黒くなっちゃう。いや、もともと私は腹グロだとは思ってるけどね?


「……えっと、でも、」


と、ちょうどそのとき、タイミング良く呼び出しの放送がかかった。


≪野球部マネージャー、野球部マネージャー、刈谷まで来なさい≫


「…では、失礼します」


「待ちなさい!まだ話は終わって無くってよ」


「でも、刈谷先生からの呼び出しもありましたし」


そう言って、踵を返して、遠ざかった。呆然としている3人を後に残して。


というか、刈谷まで、ってどこに行けばいいの???


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あきゅろす。
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