「ん〜…?」 勢いよく伸びをして、あたりを見回してみると、そこは見慣れた自分の部屋じゃないことに気づき、思考が一時停止。 隣を向くと、まだ穏やかな寝息を立てている風の姿が。そこで、やっとここが彼女の部屋で、あたしの部屋には今、隼人とたけちゃんが眠っているということまで思い出した。 時計を見ると、まだ7時。いつもなら二人してまだ寝ている時間だ。 そこで、ふと、思いつくことが一つ。 あたしは、ほぼ無意識で手を枕の下に入れていた。 「……あ」 そこで、頭は一気に覚醒。ことの事態に気づきパニックになりかける頭の中。そう、昨日取ってくるのを忘れたのだ。アレを見られてどうということはないけど…。いや、アレを見られるのは非常に恥ずかしい! 「よし。取りに行くしかない…」 たぶん、まだ寝ているだろうし、寝ているんなら見られていないはずだから素早く抜き取ってこっちに帰ってくればいい。 もし起きてても、…起きていたらどうしよう。問い詰められてそれを流せるほど自分ができているわけじゃないし。 「大丈夫。寝てる、寝てる」 ほとんど暗示のように呟き、そっと風の部屋を出る。 夏ということもあって、もうすっかり明るくなり、日差しがカーテンの隙間から漏れている中、少し薄暗い中を自分の部屋へと歩く。 そして、自分の部屋なのになんとなく息をつめながら、そっと扉を開けば、布団で寝ている黒髪が見えた。 ということは、隼人がベッドで寝たのか。 一人、そんなことを考えつつ、なるべく忍び足でベッドの枕元まで来る。そこに、銀髪の髪が見えたが、微動だにしないことからまだ寝ていると判断。 それにかなり安堵しつつ、これからが問題だと気を引き締めた。 そっと手を伸ばし、枕の下に手を忍び込ませようとした瞬間、 「何してやがる!」 「ひぃっ!」 布団をガバッとはいで、あたしの伸ばしている腕を思いっきり掴み、ダイナマイトをもう片手に持った隼人が低い威嚇するような声で言った。 「てめえ、やっぱりどこかのマフィアの…」 「ち、ちがっ!あたしはただ、忘れものしたのを思い出したから取りに来ただけ!」 彼が言葉を言い終わる前に遮り、早口でまくしたてる。いつの間にか起きていたたけちゃんは、はやとの横に座り面白そうに眺めている。 「別に、今取りに来る必要ねーだろうが」 「だって、見られると…ちょっと、ね」 「やっぱり何か隠して!」 「だーかーらー」 「ねえ、何やってるの?」 「風!」 突如、入口の方から聞こえてきた声に目を輝かせて、助けを求めた。それを彼女は怪訝そうに見た後、部屋を見回し、あたし、隼人、たけちゃんの順番に見て、最後に未だに握られているあたしの腕へと視線を落とした。 「ねえ、何やってるの?」 もう一度同じ言葉を繰り返しながら、近づいてきた風に、隼人はまたもや威嚇をするように睨みつける。 「こいつが、寝込み襲おうとしてきた」 「なっそんなんじゃない!ただ、どうしても取りたいものがあっただけ!」 「じゃあ、普通に入ってくりゃいいだろうが!」 「だって…起しちゃ可哀想かなって…」 「えっと、とりあえず、その腕放そうか。血が止まりかけてる。あと、ダイナマイトしまって。ここで爆発させられたら死んじゃう。というか、生き埋めになりそう」 ダイナマイト爆発させられて生きてるのかはわからないのじゃ、とは思ったけど口には出さず、渋々といった感じで離された腕には、ほんのりと赤い痕がついていた。どれだけ強く握ってたんだ! 「で?空は何を取りに来たの?」 「えっと…その…、センパイの…」 「ああ、成る程。だから、寝込みを襲うね」 風はアレの存在を一応知っているからか、合点がいったようで、ひとりで納得していた。 「で、何とろうとしてたんだ?」 たけちゃん!そこは聞いちゃダメなところだよ!あたしは、風に言わないで!と目で訴える。 「…それは、まあ、命を狙うとかじゃないから安心しなよ。とりあえず…お腹が空いたから朝ごはんにしよう」 風は適当にはぐらかし(?)てリビングへと出て行った。あたしは、2人を部屋からなんとか追い出して、アレを枕の下から取り出す。 「なんとか、死守した…」 溜息がこぼれる中、あたしの手の中には1枚の写真が。 そこには、南先輩の姿が映っている。 「見られて笑われるとか、絶対に嫌だし…」 隼人はどちらかと言えばひくか、無関心だろうけど、たけちゃんなら笑いそう。しかも、天然だから何言われるかわからない。 何度目かのため息をついて、その写真を机のカギ付き引出しの中にいれて厳重に保管した後、あたしもお腹がすいてきたのでパンの焼けた美味しそうな匂いがするリビングへと戻った。 |