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烈々布店長の裏(銀魂)
助けて兎さん(表versionとほぼ変わりません)
あれ…
頭が重い…
何で私…寝て…


「お目覚めか」


聞き慣れない声に飛び起きた私を 殺風景な、何も無い部屋で見つめる天人

嗚呼 私は拐われた様だ


『…私 おつかいに行って…』


「薬で頭がボケているのか…まぁいい、おまえは交渉の道具になってもらうぜ」


『交渉…』


「あの傭兵軍団の一員で 聞けば手厚く扱われてるらしいじゃねぇの、そこそこ重要人物なんだろ おまえ」


『へ』


「あの糞ウサギ共の中にメスが一匹…団長の情婦ってとこかい?」


何とも下衆な笑みで私を眺める
下卑た質問には答えてやらない


『…何が 目的…??』


「なぁに、ちょっと今回のヤマから手を引いてもらいたいだけさ
第七師団はケーララ草原を越えられない、ゴア山脈にルート変更してもらう」


『…私なんかの存在で 団長が揺らぐと本気で思ってるの??』


「トボケたってムダさ、下調べは済んでる」


『アハハハ、私なんかただの飯炊き女。団長はおろか 下っぱの出番すら無いよ』


「な…まさか…」



『バカだね、何処情報だよ』



さぁ、この窮地をどう治めるか…

私 久しぶりに戦闘モード…かな


━━━
━━


━━ちゅどーん━━



「おぉい、冬窓床ー ここかぁ?」


『え?阿伏兎さん!?』


「ぐおぉぉぉ!おまえは…第七師団副団長…」


阿伏兎「帰りが遅せぇとよ、団長がご立腹だぜ?」


『な、なんで此所が…』


阿伏兎「アンタは団長の大事な金の卵だ(ウマイもんを生み出す)、GPSくらい忍ばせておくだろうよ」


『ちょ、勘違いを招くセリフは辞めて…』


「やっぱ 団長のイロなんじゃねーか」


阿伏兎「え 冬窓床、団長のイロなの?」


『だあー!ややこしい!んなわけあるかー!阿伏兎さん!早くコイツをやっつけ…ひゃあ!』


言い終る前に身体が宙を舞って 阿伏兎さんの腕にすぽりと収まってしまった


『きゃははああぁぁぁぁ阿伏兎さん!?』


阿伏兎「長居は無用だ、ホラ 大人しくしてな」


瞬く間に私を抱き上げ、駆け抜ける

こ、こここここれは!?夢にまで見たお姫様抱っこ!!


阿伏兎さんの腕 暖かいし力持ちだし
ヤダ…もう死んでも良い…



━━ちゅどーん━━


遠くない距離で、爆炎と轟音が髪の毛を掠めた
弾薬…だろうか…?


『あわわわわ、ほ、砲撃!?』


阿伏兎「コッチが少数で動いてんのがバレちまったかねぇ、まぁあの丘を越えちまえば大丈夫だ」


わ ほっぺに無精髭が当たって…ひゃあああドキドキする!


阿伏兎「しっかり掴まっとけよ」


いや 掴まるも何も、抱えられてんのにどうやって

でも折角だから 首に手を回しちゃったりして……


『は、はい…』


阿伏兎「ほいっ」


その掛け声でグンッとスピードが上がった


ぎゃー
すごい跳躍力で砲撃を避けた!

怖い!別に高所恐怖症とかじゃないけど 普通に怖い!

特に重力に従って降下する時!!


振り落とされ無いように 目も手元もギュッと閉じていた


阿伏兎「ったく…おつかいには誰かに付き添いしてもらえっていつも言ってンだろうが…」


『すみません…』


ちょっと怒ってる阿伏兎さんに 抱えられて、
どのくらい走ったのだろうか


阿伏兎「…そんなに熱烈に抱き締められちゃうとオジサン、ドキドキしちゃうなぁ?」


『へ…あ!ご、ごめんなさい、目的地到着!?』


すとん、と
その腕から降ろされた其処は
以前作戦表で見たケーララ草原だろうか

だが 団長や仲間の姿も見当たらない


阿伏兎「ったく…ここで落ち合う手筈だったのに、団長はまた勝手にフラフラしてやがんのかね…」


溜息をついた瞬間 今度は別の方向から爆発音が聞こえて閃光が走った


阿伏兎「チッ…」


『新手?』


阿伏兎「案外 無駄遣いできる人数が揃ってるんだねぇ」


目の前に現れた体格の良い三人組からは物騒な匂いがする

バッ と身を翻し、二人は阿伏兎さんに襲い掛かって来た


『阿伏兎さん!』


敵の技の応酬を物ともせず 傘で一人を叩き落とす


阿伏兎「テメェの心配しなぁ、このお人好しチャンが」


気付けば あとの一人が私にジリジリと迫って来る

マズイ 接触を余儀なくされるなら…立ち向かわねば…!


阿伏兎「チッ…冬窓床、戦えんのかァ!?」


『ったく…折角 か弱い乙女キャラを守って来たのに…』


ザッザッザッ、
速度を落とさない敵の足元


『阿伏兎さんに嫌われたら、あんたら 7代祟ってやる!』


戦闘力は夜兎に比べて比べ物にならないレベルだ
そんな私が使える 忌まわしくも効果的な技は、夜魔の力


精気、生気に飢えた夜魔のエナジードレイン、食らえッッ!


端からは何が起こったかはよくわからないだろう


敵「!?」


間合いを計り 身には触れずに精を吸う


驚いて停止した獲物を 護身用の包丁で
三枚に捌く!

弱体化させ スキを突く
なんとも脆弱だが…

初めて見せたから…こちらの様子にちょっと驚いた阿伏兎さんが
相手してる敵ともケリが就いた様だ


阿伏兎「へぇ…守られてるばかりのお嬢さんかと思ったら、少しはやるんだな」


『こ、怖かったですよ』


屍を覗き混む阿伏兎さん


幸い、敵は黒いマントで覆われているので エナジードレインで窶れた面持ちまでは 見え難いだろう

死角にも入った事だし………


阿伏兎「あんたは…吸気系の種族だっけか?」


ぎゃー 即バレー!

これは、誤魔化せないな。素直に白状しよう…


『…覚えて…ないんです…』


『目が醒めたら、知らない所に居て、知らない私でした』


阿伏兎「…」


『知ったのは 少しだけ戦える本能と、飢餓感』


『他者の精気を吸わないと 私はきっと生きては往けません』


阿伏兎「…今まで どうやって調達してたんだ」


『出来るだけ、本当に空腹でヤバい時のみ、
船内で関わる人達や 町に立ち寄った時に、当人達には気付かれないように…』


阿伏兎「なんで黙ってた?」


『きっ…嫌われたくないから…』


阿伏兎「?」


『寄生虫みたいで…キモチ悪い、こんな性質…第七師団の皆に、嫌われたくないんです…』


阿伏兎「はっはっは 成る程なぁ…あんたが悩みそうなこった…はっはっはっ」


笑い出す意味が よく判らなくて キョトンとした私を流して 彼は続ける


「いいか、俺達は海賊で、悪名高き夜兎の集団なんだぞ?吸気族くれぇにビビらねぇよ
おまえの所属先を見くびってんなよォ?」


『…』


阿伏兎「大体何だぁ?俺達に嫌われたからって別に痛くも痒くもねぇだろ、俺達自体が宇宙の嫌われモンなんだ」


『痛くも痒くもあります!私…皆さんがスキです…今の暮らし、楽しいです…ご飯作って、皆さん、美味しいって食べてくれて…』


気が付くと 涙がポロポロ溢れてくる


『皆さんの笑顔、スキです…おやつの取り合いは困るけど、団長だって良い人だと思います…阿伏兎さんの笑顔も大好きなんです…』


阿伏兎「━━…」


『嫌われちゃうの、怖くて言えませんでした…うぇ…』


阿伏兎「解った解った、ったく 酔狂なこった…ほら泣くなよなぁ」


ポンポン、と頭を撫でてくれた
優しい手
余計に涙が止まらなくなっちゃう


『うっ…ごめんなさ…うぇ…』


阿伏兎『…ったく…辛かったんじゃねぇのか……補助型か?主食型か?』


『え?』


阿伏兎「アンタの吸気の型だよ、
吸気してのみ 身体の養分とするのか
他に摂食して、その補助として吸気が必要なのか、
どっちだ」


『補助型…』


そんな種類あったんだ、知らなかった


阿伏兎「食系統は何だ」


『え、えっと』


阿伏兎「吸ってるモンだよ!血か?気か?」


『せ、精気ですっ』


阿伏兎「どれくらいの量が必要なんだ?」


『そんなに大量には要りません…そこの干からびてるヤツので、2日持ちます…』


阿伏兎「そりゃ節約して持つ分の体力だろうが、とりあえず 干からびる程には吸わないんだな?」


『は、はい…その人には 敵だし、殺意がありましたし 命掛かってましたし』


阿伏兎「…なら 明日からは俺がくれてやる」


『へ?』


阿伏兎「精気だよ 夜兎の体力なら屁みてぇなモンだろうが」


『えええええええッッ!阿伏兎さんが!?』


阿伏兎「なんだい オジサンじゃあ不服かい」


『いやいやいやいや!!全く不服なんかじゃないです!ででででも、あのそのあの』


阿伏兎「なんだ ハッキリ言え…補食方法か?」


『はい…あの…せせせせせ』


阿伏兎「え?セックs」


『やめれー!ちがくて!接触しますよって!吸うに当たって!!ペタペタ触りますよ、いいですか?って聞きたかったの!!』


阿伏兎「あー、そー 好きにしな でも痛くすんなよ」耳ホジ


『わ、分かりました…ありがとうございます!』


話が一段落しかけた時、聞きなれた声が聞こえた


神威「おーい」


阿伏兎「団長ォ 何処行ってたんだよぉ ったく」



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あきゅろす。
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