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「チロルチョコが好きです」
彼は意外と高い声でチロルと名乗った。
ベースの彼は、そそくさと定位置に戻ると次の曲の待機をする。
ミヤさんは困ったように笑う。
「あ、チロルさんはMCが苦手なんで、変わらず俺とウエちゃんでMCします。ちなみにキラキラした彼が入っても、ハルシオンはキラキラした曲は作らないから、バンギャさんは安心するよーに」
そう言って彼は、ギターの上田さんにマイクを渡した。
上手待機していた私は、ミヤさんと上田さんのMCのごたごたより、目の前のチロルさんが気になって仕方なかった。

彼は金とピンクのツートン。生え際の黒や色斑がないところから見ると、かなり近い間隔で染めて続けているに違いない。
すっぴんだったらどんな顔なのか分からないが、かなり広い範囲を囲ったシャドーで元々の可愛い顔を殺してる気がした。
女形っていうのが流行っているから、ハルシオンも便乗してチロルさんを投入したのかもしれないが、彼はその辺の女形より異様な雰囲気を放っている。某薔薇の末裔バンドのギタリストに某和製ホラーバンドのベーシストよりも女らしい、というか。
そんな不思議な雰囲気に魅了された私は、ミヤさんがベーシストからギタリストに転職したように、ミヤギャからチロラーに転職することにした。

高い声で名前を呼ぶと、彼はきょろきょろして声の主を探し、照れたように笑う。
不器用な笑顔が素敵だった。




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あきゅろす。
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