天上王の好敵手として
「今回は……面白かった」
ミクトランにもう立ち上がる力はきっとない。神の眼を使う気もない。スタンの技は完璧にミクトランに致命傷を与えていた。
俺はミクトランの前に立った。
「何故……何故また天上を支配しようとしたんだ?今回じゃないからな」
「私が負ければ……天上人は酷い目に合う。最初にコアクリスタルに人格を投射した時は、負けられなかったからだ」
「ミクトラン……」
最初は純粋な仲間の天上人を思う気持ちからだったのか……。
「千年もの間眠りについた間に理想は歪んだ……地上人達を殺したいと…………それがあのザマだ」
「んで、今回は」
「お前と決着を……つけたかった」
「うわ、急に理想小さくなった」
「そうだ……私らしくもない。だが、あのような結果は納得いかなかった」
目を細めたミクトランは手を真っ直ぐ上げた。
「楽しかったぞキリオ……私の唯一の好敵手よ」
「……あぁ、一度は殺されたけど俺もお前と戦えて良かった」
ミクトランの拳に己の拳を軽く手を当てた。
「すまなかったな……カトレット姉弟」
「「!」」「キリオ……また逢えたら……今度は…友人として………共に………た…た……かい…たい」
ミクトランの腕が力なく落ちた。俺はしゃがんで、ミクトランの目を閉め手を胸に重ねた。
「ありがとうミクトラン。だけど、やっぱり俺はお前が大嫌いだ」
立ち上がって真っ直ぐ神の眼を見る。これで最後だ。
「後は……神の眼破壊か」
『これで我達の役目も終わりか……』
「ディムロス……」
『……私だけを刺しなさいキリオ』
「ハロ!?」
バッとベルセリオスを見る。
「何、言って…るんだ」
『貴方に託したコアクリスタルと、ソーディアンベルセリオスだけで神の眼の破壊は充分可能よ』
「待てよ…ふざけんじゃねぇ!!また……また俺にお前を………ハロを置いていけって言うのかよ!?」
『そうよ』
迷いのないその声に酷い不安が駆け巡る。ここまできて、全員帰還が出来ないのか?
結局俺は……何も出来ないのか?
「嫌だ……」
『キリオ』
「嫌だっ!!何でっ何で2回も神の眼なんかにハロを奪われなくちゃならない!!俺がどれだけ後悔したか知って言ってるのかよ!?……ただでさえ、カーレルが居なくて寂しかったのにっ……俺はっ」
かなりの大声で怒鳴ったが、最後の方は涙で上手く言えなかった。
シンッと静まっている。
『キリオ良いのよ。それに……私は…ソーディアンベルセリオスはもう……限界、なのよ』
「!」
『いくら人格が残ってて主権を取り返せても、コアクリスタルへの負担はかなりのものよ』
言われてからコアクリスタルを見るとヒビが入っていた。
『お願いキリオ。ベルセリオスが壊れないうちに…………最後の仕事やらせてちょうだい』
「ハロッ……」
俺の相棒で、友人で、家族で、この世界ではエミリオと同じくらいに大切な存在。
だからこそ、俺はソーディアンベルセリオスのマスター立ち止まっちゃいけない。
「分かったっ」
俺はベルセリオスを振り上げた。
決着と決意
(ああ言ったけど最初から分かっていた)
(俺とソーディアンベルセリオスが一緒にいれないこと)
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