君達に黙って
「私の部下になる……だと?今まで散々私の邪魔をしてきてたのにか」
「…………手駒がいないお前には手が出るほど必要な筈だが」
スタンとリオンが任務に行ったのを確認し、マリアンが買い物に出ていったのを見届け、俺はミクトランの所に乗り込んだ。
エミリオが居なくなった今、俺が選ぶ道は決まってしまった。あの時エミリオが自分に任せろと言って、何をしていたか俺は全く知らなかった。俺が聞かなかったミスだ。
運命は遅かれ早かれあの時へ必ず来る。ならば、俺が犠牲になるのが一番だ。
しかし、今更ながら思うのは、エミリオとミクトランの邪魔を散々しまくったのだ。部下なんて了承しない気がする。
「……良いだろう」
「は?」
「その代わり貴様には部下を減らされた分動いて貰うぞ」
「い……良いのか?」
「自分からお願いしておいて何を言っている」
「簡単には了承しないと思っていたからな」
「リオンよりは貴様の方が扱いやすい。今から私の用事に付き合って貰うからな、来い」
「分かったミクトラン様」
「様はいらん。貴様が言うと気持ち悪い」
「悪かったな」
ミクトランの後ろを歩きながら、不思議と違和感を感じる。
ミクトランってこんなに雰囲気優しかったか?
考えるが、原因は分からないので思考を止める。怖い雰囲気ではないことに越したことはない。
しかし、バレたら絶対にスタンとディムロスとウッドロウに怒られそうだ。……気にするの止めよう、考えただけで怖い。特にウッドロウが。
物語が始まる前に最後に会ったとき、ウッドロウに呼び出されて言われた内容に固まった。
「好きだキリオ」
「…………は?」
「ずっと前から君のことが好きだった」
「ちょっ、は、や、な!?」
「もうリオン君に君を任せてはおけないと思ってね。君がリオン君を好きなのを承知で言う。私にホレさせてみせる。覚悟しておいて欲しい」
十分ドキッとしましたよウッドロウ。
正直嬉しかった。多分俺を励ますために言ってくれただろうし、何より嘘はなかったから。それでも、彼を想う俺は馬鹿だよな。
忘れられても、他の誰かと一緒に居ても、彼への思いは変わることがない。
ごめんなさい、ありがとう、ウッドロウ。
俺は歩みを進めた。
ミクトランの腹心
(この苦しい想いも、嬉しい想いも)
(聞いてくれたのは)
(いつでもあの二人だった)
NEXT
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!