君と仲直りし
リオンが立ち上がると、ウッドロウは俺をリオンの方へ優しく背中を押した。リオンはスッと頭を下げた。
その事に俺は軽い驚きを覚える。18年前の俺の知るリオンなら人に頭を下げるなど絶対にしなかった。これが踏み寄れない18年の歳月の証。
謝らなければならないのは、断ち切らなければならないのは俺の方だった。
「先に謝らせて欲しい……すまない」
「いや、俺が悪い。もういいんだ……」
俺は首を振ってリオンに顔を上げさせた。
「だが……」
「俺が死んでから18年間、お前は生きてきた。俺が死んでから傍に居たのは彼女なんだろ?……生きている今を、未来を見ろ、リオン。俺は既に過去の人物なのだから……俺のことで後悔なんてするな。俺は、キリオ・アキヤマは――
エミリオの幸せを願って死んだんだからな」
自然に俺は笑った。
そうだ、ずっと忘れていた。
リオン達と旅をしたキリオ・アキヤマは、純粋に彼等の幸せを願ってそれを全うして死んだ。
俺は彼等に重荷を背負わせたかった訳じゃない!!!
「ごめんなさい……ずっと貴方達を縛り付けてしまいました、私を殺したという後悔で」
ウッドロウの方にも視線を向ける。一番重荷を背負わせてしまったはずの彼に。
「私はやりたかったことをやり、半分くらいは自殺まがいで死にました。でも、残された人のことを考えていませんでした」
俺は深々とリオンに、ウッドロウに頭を下げた。
「ごめんなさい……あの時裏切ってしまって、剣を向けてしまって。少しでも頼っていたなら……」
――俺は今も皆の傍で笑っていられたかな?
「本当に馬鹿だ…お前は」
リオンがポツリと口にした。俺は顔を上げようとはしなかった。
「だが、あれだけ一緒に居て、お前が背負っているものに気付かなかった僕が一番……馬鹿だった」
「……」
「すまない……今の僕にはマリアンを切り捨てるのは無理だ。今更信じてはもらえないだろうが、お前が大切だったのも嘘じゃない!!……それだけは信じて欲しい」
「リオン……もういいから」
「手を出せ、キリオ」
急に言われて固まる俺。一時そのままにしていたら、リオンに顔を上げさせられ、手に何かを握らされた。
「え」
「貰って欲しい」
恐る恐る手を開けるとそこにあったのは、リオンがいつも身に付けていたピアスだった。だけどこれは……
「流石に貰えないっ!!クリスさんの、リオンの母親の唯一の形見だろ!?」
「阿呆、もう片方ある。それに僕はマリアンじゃなく、お前だからやりたいんだ。僕を想ってくれていたお前に」
それでも俺が貰うのを渋っていると、リオンはピアスを取ったら勝手に俺の耳に付けた。
「ちょっ!?」
「ふんっ、僕が良いと言っているんだ」
そのリオンの態度は18年前と重なった。唖然とした俺を放っておいて、リオンは片膝をついて、俺の手を取った。更に混乱して俺を無視してリオンは言葉を口にした。
「そのピアスを証に誓おう。僕がこの先お前を、キリオを護り抜くことを」
誓いの言葉
(その宣言通りリオンは)
(あの未来で)
(俺を守ってくれることになる)
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