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君を切り捨てた

 


「ジューダス!」



リオンに呼ばれて振り返る。カイルとロニに一人にさせて貰えず、少々困っていた。彼等なりの気遣いだろうが。

リオンに肩を捕まれた。



「どうして僕を頼らない!?お前は……っ!?」



俺は黙ったままリオンの手を思いっきり払った。その行動に全員が目を見開いた。

こんなにも俺の心は乱れている。あの二人は本当に心の底から俺の大切な相棒だ。全てを知っていてもなお、俺について来てくれた。

本当に大切だったんだ。それこそ、スタン達以上に。刺したくなんてなかった。神の眼なんかの為に失いたくなかった。

リオンはそんな俺に気が付いてなかった。現代に帰ってきた時に居たマリアンの存在によって。
気が付いてしまった。リオンが俺を見ていた目は同情だったことに。

もう限界だった。こんなときハロやカーレルが諭してくれたんだ。でも、もう居ないんだ。



「リオン……僕はもう限界だ。僕に今後一切必要以上に近付くな」

「なっ!?」

「「「「ジューダス!?」」」」

「どういう事だ!?キリオ!!」

「貴様の同情や罪滅ぼしに付き合う義理はない!!もうその名で呼ぶなっ!!」



キリオと呼んで良い彼らはもう居ない。もう想ってもないなら呼ばないで欲しい。



「っ!!……違うっ!!僕はお前が「なら!!……なら、これを外せ!!」



リオンの左腕を掴み前に突きだした、未だに付いている婚約指輪を。



「これをマリアンの目の前で今すぐ外してこいっ!!!」

「っ……」

「!!」



リオンは目線を反らした。ほら、やっぱりな……。

微かに誰かが反応したがもうどうでもいい。



「外す覚悟がないのなら僕に近付くな。貴様の甘い考えに付き合っている暇はないっ!!……すまない、カイル。いっとき一人にさせてくれ」



俺はそう吐き捨てて街へ先に足を向けた。










「あらら……少し遅かったみたいね」

「そんなこと言ってる場合か!?悪いけどカイルにリアラ、ナナリー。先にジューダスを追え!」

「あ、あぁ!そこの馬鹿頼んだよロニ。行くよ、カイル、リアラ」

「うん!」「えぇ!」



俺はナナリー達を見送って、リオンさんの前に立った。

あのリオンさんの曖昧な態度男として納得いかねぇ!

俺は思いっきりリオンさんを殴り飛ばした。不意打ちを食らわせたせいか、ジューダスが去ったせいか、簡単に殴れた。



「何をするっ!?ロニ」

「今の状況なら間違いなくルーティさんでも殴ってますよ。リオンさん、あんな中途半端な気持ちでジューダスに告白したんですか!?」

「それはっ……」

「正直見損ないました。ジューダスが、キリオさんがどれだけ貴方の事を想っていたのか分かっているでしょう!?中途半端な想いが、リオンさんがマリアンさんに向ける想いが、どれだけジューダスを傷付けたか、アンタはまるで分かってねぇ!!」



ハイデルベルグに戻ってきてから、ジューダスが双剣ソーディアンが傍に居ない事を酷く落ち込んでいたのは、端から見ても見え見えだった。あのカイルですら、気が付いたんだ。一度会った人なら違いに気付くだろうと思うくらい、それくらい落ち込んでいた。
俺とカイルはジューダスを一人にさせまいと、リアラとナナリーの協力のもとしっかり確保していた。あの調子じゃまた一人で背負い込みそうだったからな。

それなのにリオンさんは、ウッドロウ陛下がマリアンさんが居ると口にした瞬間、すぐにマリアンさんを探しに行った。あの端から見ても酷く落ち込んでいたジューダスを置いて。

絶対にあの時がジューダスの心に止めを刺した。あれからこの時まで一言も喋らなくなったのがそれを証明している。



「俺も言います。ジューダスを本当に大切に想うのなら、マリアンさんとジューダスの目の前で指輪を外してください。それが出来ないのなら、ジューダスに馴れ馴れしく近付くな」

「…………」

「ハロルド、俺もジューダス追いかけに行く。城に戻ってねぇか見てきてくれないか?」

「コレは?」

「俺はもう知らねぇよ」

「りょうか〜い♪」



俺はリオンさんを睨み付けてから走り出した。





我慢の限界


(ハロ…カーレル……)
(お前らが腰に居ないだけで)
(こんなにも寂しいなんて思わなかった)
(アイツもそうだったんだろうか……)


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