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お前を再び見付け(番外編)

 


「今日、だな」

『ええ……そうですね』



いつもより早く起きてしまって、窓際で日の出を眺める。この日が来るのが待ち遠しく同時に怖くて堪らなかった。



「キリオ……お前もこの軸に還ってきてるのか?」

『きっと居ますよ!キリオを信じましょう!』

「ああ、ありがとうシャル」



シャルを撫で、ある方向を見つめる。彼女と初めて出会った森を。

マリアンが居るのにも関わらず、僕はずっと彼女を探していた。確かにマリアンを愛していたあの時とは違い、今は僕のために尽くしたキリオの存在が多くを占めていた。
二度目の人生があるならば…と考えた彼女との別れの時。そして僕は二度目に来た。今度はキリオを助けてあげられるように。



「!……来たな」

『行きましょう坊ちゃん!』



屋敷の扉が開いた音と、馴染み深い声に聞き覚えのある兵士の声。僕は部屋の扉を開けた。



「ジョブス、急ぎなのは分かるが静かにしろ。何時だと思っている」

「リオン様?!起きていらっしゃったのですか!」

「す、すまない」



前回、僕の副官まで上がってきており、今は何故か僕を信頼して部下の兵士。コイツはスタンと似ており、だからこそ信頼できる。玄関先まで降りていく。



「急ぎなのだろう?」

「あ、ああ!街に近い森でモンスターが謎の大量発生しているんだ。フィンレイ様も出てくれてるんだが、手に終えないモンスターもいるから陛下が出て欲しいって」

「分かった、すぐに行こう。後、ジョブス。人がいないから構わないが、言葉遣いに気を付けろ」

「あっ……つい客員剣士だった頃の感覚が抜けなくてな。リオン様、陛下からの伝令です!」

「………言う順番逆だ、馬鹿者」



ジョブスを思いっきりシャルの柄で殴った。シャルにも抗議をされたが気にしない。

マリアンから外套を受け取り走り出す。街の入り口で他の兵士達と合流する。前回とほぼ同じ時間に、同じ任務。不安と期待に高鳴る心臓。頼む、居てくれ。祈るような気持ちで足を走らせた。森についてすぐに、ジョブスに指揮をとらせ、フィンレイ様を探す。彼は僕が来たのを知ったらしく戻ってきていた。



「すまないリオン。私一人では片付けきれないと思ったのでな」

「構いません。フィンレイ様は討伐をお願いします。私は奥で原因を探ってきます」

「分かった、頼んだよリオン。無茶はしないようにな」

「はい」



フィンレイ様に頭を撫でられる。僕にとってこの人は父親に近い存在なのかもしれない。前回、ミクトランに暗殺され亡くなった彼を助けて良かったと思う。
ある程度の報告と指示を聞き、森の奥へと走り出す。彼女と出会った場所へ。



『…坊ちゃん!この先で強いレンズ反応があります!』

「分かっている!」



強い光が見えた方向へ更にスピードをあげる。そして、急に開けた場所へ出た。彼女との出会いの場所に。思わず立ち止まる。



『坊ちゃん!』

「!…すまない、少し………!!!!」



シャルの声に正気に戻り辺りを見回して、言葉を失った。無意識に駆け出していて、倒れていた彼女に駆け寄る。髪が長くても見間違える筈はない、別れたときと変わらない漆黒の服。その服もかなりボロボロで、彼女自身も傷だらけだった。それだけならば良かった。だが……



「キリオ!キリオ!!」

『不味いです!先に止血をしてください!!』


   ・・・・・
右腕があったはずの場所には血溜まりが出来ていた。外套を脱ぎ遠慮なく引き裂く。キリオの上着を引き裂いた。悪いとは思うが、今は命が最優先だ。傷跡の酷さに一瞬だけ滞るがすぐに気休め程度にしかならないが、シャルでヒールをかける。キツく縛り上げ、更に僕の上着で傷口を強く押さえ付け、彼女を抱き上げた。微かに感じる心臓の音に安堵する。



『血をかなり失っている上に、かなり衰弱しています。急がないと大変なことになりますよ!』

「ああ!」



あまりキリオに負担をかけないように走り出す。折角戻ってきた彼女を死なせてなるものか。森の入り口にまで来るとフィンレイ様とジョブスが立っていた。



「リオ…ってどうしたんだい?!」

「怪我人だ。すぐに治療をしないとっ!!」

「落ち着いてリオン。君が取り乱すなんて……」



フィンレイ様に言われて僕自身も不思議に思ってしまった。ただ、キリオが心配で、また話したくて、会いたくて、生きて欲しくて、傍に居て欲しくて。そこですぐにストンと理由が埋まる。

そうか……僕はキリオが好きなんだ。
直にこうやって彼女と逢って分かった。愛しいと素直に思う。前回、近くに居すぎてわからなかった彼女への想い。それが今、ようやく埋まった。



「知り合いかい?」

「はいっ」

「なら、早く運んであげなさい。私の名前を出して城の医者に見せてあげるといい」

「ありがとう、ございますっ」



優しい手つきで僕の頭を撫でてくれたフィンレイ様。彼やジョブスが居るならば僕が抜けても平気だと信じられる。申し訳ないが彼女を最優先にしたいので、頭を下げる。



「森の奥に巨大な木があります。多分それが原因かと……後は頼みますフィンレイ様」

「勿論。リオンに久しぶりに頼られたからきかないわけにはいかないよ。ほら、早く行きなさい」



背中を押してくれたフィンレイ様に感謝して、僕は一人だけ兵士を借り急いで街へと足を向けた。





届いた想い


(目覚めてくれキリオっ)
(リオン…(彼がこんなにも取り乱すなんて、この子は誰なんだ))


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あきゅろす。
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