望むのは君の幸せ(番外編) 「キリオ、マリアン。二人に少し話したいことがあるんだが……」 「なんですか?」 「そうだわ。折角だからお茶にしましょう!」 マリアンに座らされて苦笑いをする。ソワソワしているエミリオに疑問を抱く。 「どうしたんですか?エミリオ。らしくないくらい、ソワソワしていますよ」 「いや……その、報告したいことがあるんだ」 「まあ、なんなの?」 御茶と菓子を持ってきたマリアンはそれぞれに配り、俺の隣つまりエミリオの前に座った。 「先程ドライデン将軍に会ってきたんだが……七将軍にならないかと誘われたんだ」 「!」 「まあ凄いじゃない!エミリオ。それって七将軍の方々に認めて貰えたってことよ」 「おめでとうございますエミリオ」 そうか、この世界でも声をかけられていたのか。しかも、嬉しそうなエミリオの様子からヒューゴinミクトランの計画は本当に知らないようだ。良かった。 「一番にマリアンとキリオ、二人に伝えたかったんだ。今までの事、感謝している。ありがとう」 「エミリオが頑張ったからですよ。貴方自身を評価して貰えたのでしょう?私もこれ以上嬉しいことはありませんよ」 「立派になったわねエミリオ……私も区切りをつけなくちゃいけないわね」 「マリアン?」 キョトンとしたエミリオ。マリアンは席を立って、エミリオの隣に行き頭を下げた。 「ごめんなさいエミリオ」 「マ、マリアン!?」 「正直に話すわ。今まで傍に居たのは……同情に近かったの。最初は可哀想くらいにしか思っていなかったわ」 顔を上げ話し始めたマリアンは真剣な表情だった。俺は気付かれないようにそっと席を立って、ドアに向かう。この先きっと俺が居たら邪魔にしかならない。 「でも、貴方はこの旅で変わったわ。真っ直ぐ自分で立てるようになっていた。そんなエミリオの姿見たことがなくて……もう、貴方を同情とか可哀想で見れなくなった。エミリオ……凄くかっこよくなったわ、傍で見守ってきたものとして誇らしいくらいに」 「マリアン……」 「ちゃんとこれからエミリオを見るわ。約束、ね?」 「あぁ」 そのエミリオとマリアンの雰囲気に耐えきれなくなって、俺は扉を閉めた。変わってしまった。エミリオとマリアンの関係が。オリジナルデスティニーでは、マリアンがエミリオに向けていたものは同情だった。それが今、変わった。これで俺の恋は叶うことはなくなるだろう。エミリオをちゃんと見れば、惚れるのを俺が一番よく分かっている。 エミリオは変わった。笑顔が多くなったし、雰囲気が和らぎ、優しくもなった。これで彼はきっと幸せになれる、神の眼さえ盗まなければ、ヒューゴinミクトランに加担しなければ。 「エミリオ……」 先程最後に見たのは、俺には向けたことないような顔をマリアンに向けていた。綺麗だった。俺が一番見たいと願った心からの優しい笑顔。 ハッとなって壁に拳を叩き付ける。 十分だろ……俺。それ以上を望むな。エミリオは、リオン・マグナスは幸せになれるんだから。もっと傍に近寄りたいなんて望むな。 「エ…ミリ……オッ」 きっとこれが最期の会話。 俺がエミリオに剣を向けずに話せる最期の機会。 俺は終わりまで傍に居たかった。 俺は君の傍でしか息が出来ない。 俺はずっと君を見ていたかった。 それでも俺が望むのは君の幸せだけだから、何と引き換えても守り抜くよ。 「好きだ…ずっと……一生………お前だけを……想ってる」 エミリオ、俺は俺の幸せと引き換えに、お前に怨まれても君を守るよ。 ヒューゴの部屋をノックした。 最期の想い ((……キリオ?)) (この時やけに彼の、彼女の寂しそうな後ろ姿が焼き付いて離れなかった) 。 [*前へ][次へ#] [戻る] |