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呼び掛け


いくら体の内側まで冒されていても、これだけ治りが遅いのはおかしい。

と。5日目の着替えの後、ティファが深刻な顔で告げてきた。


レノは安心した、なんて言っていたが、俺たちには安心出来る要素などどこにもなかった。

こんなに治りが遅いのは、俺もティファも初めてのケースだった。



「っ、…!?」


ティファと彼女の容態について話した後に部屋へ入ると、白い羽根が数枚散っていた。
窓から何かが飛び立ったみたいに。


「なんだ?…羽根…?」

綺麗な、真っ白い羽根だった。

(この羽根…どこかで…?)


「…うぅ…あ、…!」

「っ、ケリー!?」

この2日くらいは呻くことも少なかったのに。
突然、苦しみ出したケリー。
綺麗な方の右手を伸ばして呻く。


「…って、……!」

「っ、!?ケリー!?」

「…まって……かなぃで…」

『待って。行かないで』だろうか。

「ケリー、どうした、大丈夫だから」

「や。……な、で、……っす…」

「?」

必死に宙に伸ばされた白い腕に触れ、手を握った。
すがるように、必死に、クラウドの手を握り締めてくる。

「……ふぃろ……っ…ざっ、す…」

「!!」

消え入るような声だったが。
間違いなく、彼らを呼んでいた。
セフィロス。ザックス。
どちらも、もうこの星には生きていない存在だ。


「…かな…ぃで…」


閉じられたままのケリーの目から一筋涙が流れ出た。

俺がそれを指で拭うと、
ここに連れてきて初めて、彼女が目を薄く開いた。

以前よりも、薄くなった気もする茶。
金茶と呼ぶことも出来るだろうか。


「ケリー…」

「…ザックス…」


まさか、とは思う。
ケリーは俺をザックスだと思っている?


「…………」

「…ごめ、…ヘマした?」

「……大丈夫…だ…」

「…まだ…あた、…ぃきてる…」

「っ!……ああ、…大丈夫だ。
だから、安心して休んだ方がいい…」

「…りがと、…セフィ…ス…」


ケリーは、ほっとしたように目を閉じた。
俺だと、気付かないまま。


きっと。
昔、俺が何も知らなかった頃。
こんなやり取りがあったのかもしれない。

信じられない。
信じたくない。

信じたい。



「ケリー…どうか、戻ってきてくれ…」


ザックスやセフィロスのふりをするつもりはなかった。
けれど。

『今を生きる心のある者しか、星の病は治らない』

リーブの推測を思い出したから。


ザックスも、セフィロスも。
過去の存在。

行かないで、と言って涙したケリー。

彼女は、まだ過去にとらわれているのだろう。



少しでも前を向いてほしい。
ザックスのふりだって、英雄のふりだって、してみせるから。






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