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別れの朝



朝。

朝が、来てしまった。



「…ん、」

「…おはよう」

「……クラウド…」

「まだ、寝ていても良い」

「…………ううん、大丈夫。
朝、だもの。おはよう、クラウド。
…行かなきゃ、ね」

「研究所へ?」

「…うん」

「俺も、一緒に行く」

「……ありがと、…エッジなんだけど…ちょっとややこしい場所でね。助かるわ」

「………」

「何?」

「研究所へは…行かないのかと思ってたから」

「行くよ。…きっとこれが最善なんだと思うから」

「検査って、レノは言ったよな?」

「ん。…そうだね」

「嘘、なのか?本当はっ」

「クラウド。…一緒に、来てね」

「…わかった」






ケリーの言う通り、研究所へはなかなか大変な道のりだった。

結局、治りきらないままの状態の彼女はやはり痛みと少し熱も出ていたみたいで、ほぼクラウドに抱かれたまま、地下深くの研究所へと向かった。

結果的に。
彼女の病は治らなかった。

生きたいと願うことが、泉の治癒力を引き出す。
だが、彼女はずっと罪の意識から死を望んでいた。だから、あんなに治りが遅かったのだ。

恐らく、今も死を望んでいるんだろう。
昨夜、彼女は「最期」の覚悟を決めていた。
研究所へは検査のはず…なのだが、
彼女の様子から察するに、何かある気がして落ち着かない。

昨夜、彼女はクラウドに殺して、と言ったばかりだから。






「よ、昨日ぶりだな、と」

「レノ」

「おはよう、レノ。
カルロも。久しぶりね」


研究所では、レノと、ひとりの研究員に出迎えられた。
ケリーはカルロと呼んでいた。彼もタークスなのかな?と思っていると、彼から「僕は神羅でずっと研究員をしていた。神羅崩壊まで彼女の同僚だったと言えばわかるかな?」と自己紹介された。

「それにしても…星痕がそんなに…どうして…」

「駄目ね。あの泉にも、治らない例もある。…そういうことよ」

「それどころか、…ソルジャー化が一気に進んだ。…昨日説明した通りだぞ、と」

「…そのようですね。
早速ですが、検査の方を…」

「カルロ、レノ。
私がここに来たのは…検査の為ではないの」

「…といいますと?」

「…………お前…」

「ごめんね。
……眠らせて、欲しい」

少しの静寂。
驚きと、諦めと、無力感と。
それぞれが、それぞれの感情と向き合っていたんだろう。

「………それは、…ヴィンセントみたいに、ってことか?」

「彼を起こしたのはクラウドだったわね。
……うん、彼の眠りと近いけれど、もっと深い眠り、かな。
本当は、今にでも脅威として排除されるべきだけど…私の何かを、研究に生かせるかもしれない。
再起が不可能なほどの深い深い眠りにつけば、脅威としては弱くなるはずだし。
もちろん、悪用される恐れもあるけど…」

「それはさせない」

レノが、強い口調で言い切った。

「仮にそうなれば、タークスはケリーを最優先監視対象とみなす。起こす者も全て、排除する。
お前の眠りは、誰にも邪魔させない」

「レノ。…ありがと。
あとは、よろしくね」

「…………ちょ、でも、他に何か…」

「カルロ。
私の目の色。…見たことあるでしょ?」

「それは、…でも!
星痕にしたって!俺たちは何の為に、神羅を出て…研究を続けてきたんだ?
星痕を治したかったから!神羅の研究者の罪を償いたかったから!それに、ソルジャーを救いたかったから!それなのに!」

「うん、ごめんなさい、カルロ。
どうか、これからも、ソルジャー達のこと、お願い。
クラウドも。何かあっても、なくても。定期的に診てもらってね。
カルロは神羅でソルジャー研究の担当研究員だったから。
クラウドは通常のソルジャー手術外でソルジャー化しているから…ちゃんと診てもらって欲しい」

「…………」

「カルロ。準備、してくれてたんじゃないの?」

「…………」

「レノは、その準備もしろと言わなかった?」

「でも!俺は、」

「レノ。」

「………こっちだ。と」


クラウドは、何も言えないまま、ただ研究所の奥へと促されるだけだった。
何か言わなければ。
そう思っても、引き止めたい言葉しか思い浮かばない。
昨夜の彼女の覚悟を、尊重したい気持ちと、止めさせたい気持ちとが、渦を巻いて暴れていた。


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あきゅろす。
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