いろいろ
忘れない [ソウル)シュタイン]
「ユメ、落ち着けっ!」
「やだ、離して!
フランクに合わせて!」
「駄目だ。
今、会わせる訳にはいかん」
「お願いキッド!」
「‥我慢‥してくれ」
「そんな‥フランク‥フラン‥クっ」
「‥‥すまない。
マリー先生によれば、まだシュタイン博士の狂気は収まっていないというし、不安定な彼に会わせる訳にいかないんだ」
「‥‥‥」
マリー‥先生。
今の、フランクの支えとなる人。
私は、何も出来ない。
会うことすら‥。
「すまない‥ユメ‥。
‥ただ、一つだけ聞いておきたい。
もしも、博士が完全に狂気にのまれて死武専の敵となったら、どうする?」
「私は、死武専の契約書にサインしたわ。私は敵にはならない、と」
「‥ああ」
「それが心配で?
だから、会わせてもらえないの?」
「確かに、その心配も多少はあるが、それについてはユメを信じている。
だが、博士は職人だ。いくら正気を失っても武器を求めるだろう。自分に従う武器を。
博士のユメに対する執着で、身の危険が及ぶことだって考えられる」
そんなこと、心配しなくて良いのに。
「ユメ」
「何?」
「博士と戦えとは言わない。父上だってそのくらい配慮するだろう。
だが、命を大事にしてくれ」
「どういう意味?」
「博士になら殺されても構わないなどと馬鹿なことを考えるな。
何があっても、生きる道を選べ。
‥‥それが出来れば、会わせてやれるかもしれない」
「‥‥‥‥生きているのはこんなにも、辛いのね‥」
「‥そう言うな」
「会えなくても良いと、フランクが無事にいれば良いと思ってた。
フランクが幸せになってくれれば、それで‥‥‥それで良いと‥思ってたの‥」
「シュタイン博士も、きっとそう思っているはずだ」
「ううん、‥いっそ、私のことなんか忘れてくれたら良いのに」
「何を馬鹿な‥」
「期待なんか‥したくないよ。
私は、フランクが大切だった。フランクしかいないの。‥身も心も、離れていってしまうのなら、忘れられてしまった方が良い。
赤の他人だと言われてしまった方が、どんなに楽か」
「本気で‥言ってるのか」
「‥‥」
「本当にそう思うのか?
本当に楽になれると思うのか!?
どうして、待っていると言えない!?
お前が待っていないで誰が待っていると!?」
「私なんかが待っていても迷惑かも」
「たわけ!
少なくとも、お前は博士が大切なのだろう?
大切な者が苦しんでいるんだ。どうして信じてやれない!?
自分だけ楽になりたいなどと‥」
「だって!
私だって、一緒に苦しみたかった!だけど、フランクにはもう‥一緒に苦しんでくれる人が側にいるんでしょう?」
「マリー先生はっ‥」
「マリー先生は、何?
‥キッド、私は、フランクに幸せになってほしい。
だけど、今‥フランクが彼女と生きることを望んだら‥私は、‥素直に祝福できるか‥自信無い」
「だから、どうしてそう考えるんだ?
何故、博士を信じない?」
「何を信じるの?
キッド‥、私達は恋人でも何でもないのよ?」
「‥は?」
「私は、フランクが好き。
でも、きっとフランクは信じない。
‥だから、言えなかった。好きって言えなかった」
「おかしいだろう?
恋人でもなくて‥」
「私は、ただの実験サンプル。私は‥、魔女なのよ」
「‥まさか‥!?
父上は、特殊な武器だと‥」
「武器でもある。私の父親が武器だったみたいで」
「ばかな‥魔‥女‥で武器だと‥?」
「わかったでしょ?
だから、私は貴重なサンプルだった。彼にも、死武専にとっても。
‥‥フランクが、私を‥想ってくれてた訳じゃない。結局‥ただの、私の片想いだった」
「嘘だろ‥」
「私達に、愛なんてないはずだった。
‥愛なんてなかったのに‥フランクは、あんなにもあたたかかった‥」
貴方の手も、顔も、髪も、目も、体も、全部全部。
貴方がくれた温もり
ずっと
覚えてる
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