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最強ツンデレの敗北
ヨ.よろしくお願いします
幸いなことに、1日休んだら嘘のように風邪が治まった。


――スコンッ

投げたクナイは一通り全てが15コあるそれぞれの的に刺さってはいる。だが。

「‥やっぱり、‥鈍ってる‥」

ずっと寝ていたのだから当たり前だ。

近くの的からクナイを引き抜き、少し離れて再び狙う。
しかし今度はクナイではない。

(余計なことは考えない。
‥‥うん‥この集中する感覚‥落ち着く)

正確さのために一番大切なのは精神統一。
千本を構え、投げたその瞬間。

(っ!?)

やっぱり感覚が鈍ってるようで
訪問者の気配に気付くのが遅れてしまった。
こんなに近づいてからでは隠れることも逃げることもできない。

戸惑う間に気配はどんどん近づいて、近くの茂みに落ち着いた。

「‥‥ナルト」

振り向かずに声だけをかけると
気配がびくりとした後、

「あれ?バレてた?」

と間の抜けた声とともにナルトが出てきた。


「いや〜、またスゲーな。百発百中?」

「的にはね。
的の中心からは外れてるわ」

「え?中心に刺さってんじゃん」

確かに中心の円の中には入っていたかもしれない。

「中心の円の、その中心。的確に的の中央でなければ意味ないの。1pだってズレたら駄目」

「げ‥なんだってばよ、それ。
当たればいーじゃん」

「駄目よ。ミスのない正確な狙撃が私の武器の一つだから」

ナルトに向き合う勇気のない私は手持ち無沙汰で、運よくナルトと反対側だった先程千本を投げた的から千本を抜きに行く。

「千本‥?なんで?」

「正確さのための基礎修行よ。
千本で確実にしたら、クナイと手裏剣で。固定標的を確実にしたら今度は動きながら。その次は移動標的」

「うげ。オマエってばガリ勉タイプ?」

「‥違うけど。
でも、私は中忍だし‥求められることはできなくちゃいけない。
私が忍でいるためには」

「ふーん」

的から千本を抜いてしまえば、
また手持ち無沙汰に逆戻り。
かといって、ナルトと顔を合わせられるわけもなくて。

「‥‥‥‥‥‥」

「‥‥‥‥‥‥‥」

結果として、沈黙。
私は的から抜いた千本を握りしめたまま硬直。

「‥‥‥‥」
(的が傷んでる‥。買い直さなきゃな)

「‥‥‥‥‥」

「‥‥‥」

「‥‥なぁ‥」

「な‥な何よ!?」

「あのさ、昨日の‥‥その‥
‥‥す‥好きって‥どーゆーことだってばよ?
オマエってば‥オ‥オレのこと‥好きって‥。それって‥トモダチとしての‥」

「‥言ってない!」

「は?」

「だから、そんなこと言ってない!」

「‥」

「そんなこと‥(トモダチとしてなんて‥言ってない)」

「‥‥だ、だよなぁ!
オレってば勘違いして、いやー本当情けないってばよ!」

「ナルト?」

え?
振り返るともうナルトは背を向けていた。
情けないのは私だ。
やっぱり私はちゃんと彼と向き合えないのか。

「変なこと言って悪かったな!
んじゃ、オレってばこれで。修行がんばれよ!」

「待って!!行かないで!」

「‥‥なんだってばよ」

ナルトが振り返ってくれた気配がする。だけど、また私には勇気がなくて、俯くばかり。

駄目だ。

「行かないで、ナルト‥お願い」

なんてこと。
泣くな私。こんなんじゃ女の子みたいだ。
私は、くの一なのに。

「‥ユメ!?」

泣くな。
泣いている場合じゃないでしょう?

向き合え。
いつもナルトは私に向き合ってくれていたのだから。

「好きなの。トモダチとしてなんかじゃない。
私は、ナルトが‥好き。
‥だから‥行かないで‥!」

お願いナルト。


「‥‥‥‥‥‥‥‥」


ナルトの答えはなくて、
風の音ばかりが耳についた。


「‥‥‥‥‥‥オレは、サクラちゃんが好きなんだ」


サクラちゃん。
きっと下忍仲間のくの一だろう。
他人に興味なんかなかった、どうしようもない私は、ナルトの好きな女の子すらわからない。


「オレ、オマエを初めて見た時、スッゴいカワイイ子だと思ってドキドキしたってばよ。
でも、第一印象最悪で‥。
強ぇ忍なのに、脆いとこがあったり‥変なヤツで‥今だって全然わかんねえ。
だいたい、オレのこと好きだって風に見えねーし、むしろ嫌われてるかと思ってたし。好きなのか好きじゃないのか全然はっきりしねーしよ!」

イライラされても仕方ない。
私は‥

「だけど!
なんとなくほっとけねーんだってばよ!」

「‥‥ごめんなさい」

「いや!なんでそこで謝るんだっつの!意味わかんねえ!
だーもうっ!顔上げろ!こっち向け!!」

恐る恐る顔を上げるとすごく近くにナルトの真っ赤な顔があった。

「なんつーか、オマエってばスゲーカワイイし‥好きだとか言われたの初めてだったし‥わ、悪い気はしねーっつーか‥嬉しかったっつーか‥
付き合ってやってもいいってばよ!」

「‥付き‥合う?」

「え?付き合ってくれってことじゃねーの?」

「‥‥んー‥‥‥違う?」

「はあ?」

「ナルトに、ちゃんと好きだって言いたかっただけだもの」

「‥っ意味わかんねえ!!」

「一緒にいたいと思ったの」

「オマエはオレが好き。だよな!?」

「‥‥‥うん」

「うわ、照れんの今更。かわい‥じゃなくて!胡麻かされねえぞ!オマエはオレが好き。一緒にいたい。オレも‥その‥すき‥かもしんねー‥ってことはだな!」

「うん」

「たった今からオレはオマエの彼氏で、オマエもオレの彼女ってことだってばよ!わかったか!?」

「‥うん‥?」

んじゃ、よろしく!
なんて握手されて、なんだかそのまま引っ張られ何故かイルカ先生やら新しい火影様やらに報告しに行って。
サクラちゃんって子にも会って。

ちょっと待てよ?
付き合うって‥あれ?
どうなってるの?
いつから私はナルトに流されているんだろう?

なんか、悔しい。

それでも。繋いだ手が凄く嬉しくて恥ずかしくて。
負けを認めるのも悪くないかと思いながら、一楽のラーメンをナルトの隣で食べた。





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あきゅろす。
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