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短編集・読み切り



「へっ、お楽しみのところを邪魔するから

 だ。

 お前らもこうなりたくなかったら、さっ

 さとママの所へ帰りな」


 肝心の岡本はといえば、教室内での乱闘

など目に入っていないように血の混じった

精●を溢す尻を丸出しにしたまま放心して

いた。

 涙を浮かべているのにその視線はここで

はないどこか遠くを見ていて、直視してい

られないほど痛々しい。

 こんな岡本を知っていて放っておけと言

い放ったのなら、高取は鬼畜を通り越して

いる。


「馬鹿な奴らばっかだが、これでも俺の連

 れなんでな。

 やられっぱなしで帰るわけにはいかねー

 んだよ」


 やられた分はやり返す。

 見た者をたじろがせる目線で高取がデカ

男に一歩前近づいた。


「かかってこいよ、イノシシ野郎。

 デカいのがナリだけじゃないならな」

「テメェ、言わせておけばっ…!」


 高取の挑発にまんまとのったデカ男は、

その怒りにまかせて高取に殴りかかる。

 体重がのったその拳は威力はありそうだ

が動きが鈍く、高取はそれを完全に見切っ

ているように横に跳んだ。

 高取を捕えることが出来なかった拳を苛

立ったように何度も振るうデカ男は、そう

している間に高取が少しずつ奥へと誘導し

ているのに気づいていないのか。


「吉光」


 二人の闘いを見守っていたオレを呼ぶ声

に振り返ると、隣に居たはずの九条は足元

で伸びたままのヒデを助け起こしていると

ころだった。

 高取と同じ道場に通っていたという九条

だからこそ、一見して高取1人で十分だと

踏んだのだろう。

 だとすれば残るオレ達がしなきゃならな

いのは未だに床にヘタレ込んでいる島崎達

の回収だ。

 九条の無言の目配せに頷いて応えると、

すぐ傍に転がっていた島崎の傍にしゃがん

でその頭をベシッと叩いた。


「イテッ。もうちょっと優しく…」

「うっさい、バカ。

 伸びてないでさっさと起きろよ。

 尾山や野坂だって起こさなきゃならない

 んだから忙しいんだよ」

 もう一発脳天にペシッとお見舞いすると

島崎はブーブー言いながらも床からのっそ

り起き上がった。


「尾山、野坂。お前らもさっさと起きろ。

 ずらからないと面倒なことになるぞ」


 背中を机に預けて伸びている尾山と壁際

でへたり込んでいる野坂を揺すると、くぐ

もった声を出しながら瞼を上げた。


「イッテ―」

「チクショ…思いっきり殴りやがって」


 腕や腹を押さえてはいるが思ったより元

気そうで介抱は必要なさそうだ。


「ミツー、肩貸して」

「そこまで重症じゃないだろ。

 自分で歩け」

「怪我人なのに…」


 みんなで袋叩きにしようとして返り討ち

にあった情けないヘタレのくせに、という

のはさすがにヘタレの島崎であっても言え

なかった。

 その上で更にヘタレの上塗りなんてしな

いでほしい。

 デカ男に向かっていった勢いはどうした

のかと島崎に一瞥くれてやったけど、机に

手をついてゆっくりと立ち上がる時に出た

痛みを堪えるような声がわざとには聞こえ

なくて仕方なく島崎の腕を掴んだ。





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