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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


「ほんで特別ルールって?」

「ルールは簡単ですわ。

 二人一組でチームを組み、そのゲームの

 結果でメンバーをシャッフルしながら数

 ゲームこなし、1位の人から自分が泊ま

 りたい部屋を決めるんですわ。

 だからたとえ1位になったとしても誰の

 隣室になるのかは最後までわかりません

 の。

 もちろんたとえ1位をとっても、選んで

 からの変更は無しですわ。

 みなさん、いいですわね?」


 俺は納得できなかったけど、宿の方の事

情であれば文句は言えないし、まだどこか

遊び半分でやっている以上はスタッフとし

て働いている人たちにいい部屋を譲るのは

当然のことだと思う。

 1位になったからといって後から変更が

出来ないというルールなら、たとえ何位に

なろうともその時点で一番マシな…もっと

言うと一番安全な部屋を選べるはずだ。

 上位を誰がとるかというのはなんとなく

分かるし、だとすればこの中でも危険な二

人のどちらかは…或いはどっちもを回避で

きる部屋割りも望めるかもしれない。

 針の上に立たされるような心境だけど、

そのわずかな希望に今は賭けるしかなかっ

た。




「痛…ッ」

「大丈夫、お兄ちゃん?」


 1時間後、俺はパラソルの下で呻いてい

た。

 ダンスの時に捻っていた右足首がビーチ

バレーに必死になっている間に腫れ上がり、

左右の足を並べると太さの違いがハッキリ

分かるほどになっていた。

 疲れで砂に足をとられただけだと思って

油断した。

 今夜の安眠はなんとしても手に入れたく

て無理をした結果、自力で歩くことすらま

まならなくなってしまった。

 俺の怪我を知って真っ先にゲームを棄権

した麗は、機転を利かせて飲み物が入って

いたクーラーボックスの中の氷水をビニー

ル袋に入れて持ってきてくれた。

 熱を持った足首に当てると冷たさよりま

ず先に痛みがきたけど、それも暫く当て続

けている間に腫れた患部の熱を冷やしてく

れて足首の痛みが和らぐ。

 その間に麗は湿布をもらってきてくれて、

俺の足首に貼ってくれた。


「ありがとうな。もう大丈夫だから」

「ううん。

 お兄ちゃんがちょっとでも楽になれたら

 それでいいんだ」


 麗はいつものようにニコッと笑って俺の

隣に座る。

 カイルには打って響くようなタイミング

で隣室を拒否されてしまったけど、カイル

がダメでも麗であれば隣室になっても平和

なのではないかと思う。

 あの二人と違って俺が嫌がれば麗は絶対

に無理強いはしないし、添い寝だけと言え

ば本当に添い寝だけで満足してくれる。

 まぁそれをあの二人が聞きつけたら面倒

なことになりそうだから口には出さないけ

れども。

 そしてその二人はというと、麗が早々に

ゲームを放棄したことでカイルが見守る中

1対1での対決に移行したらしい。

 明るく笑いながら遊ぶ雰囲気は一切なく、

相手の隙を狙って相手のコートにボールを

叩きつけようとする様は肉食獣同士の争い

にも見える。

 その勝負の景品になど、俺はなりたくは

ないんだけれども。


「頑張ってるね、あの二人。

 お兄ちゃんはどっちが勝つと思う?」

「…どっちも嫌だ」


 麗に問いかけられて一瞬本気で迷ったけ

れども、どちらが勝っても俺に安眠など訪

れないだろうというのは容易に想像できる。

 眉根を寄せて返事を返したら、麗がクス

ッと笑った。





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