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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


「クロード、冗談だからって勝手な事言わ

 ないように。

 そもそもイギリスは母さんの母国なだけ

 で、俺には行ったこともない国なんだか

 ら。

 大学も就職も日本でするつもりだから、

 帰るならクロード1人で帰ってくれ」


 きっぱりと断ったのに、クロードは意に

介した様子も見せずに肩を竦めた。


「食わず嫌いはあかんって。

 もっとグローバルな視点で物を見な視野

 が狭まるで?

 留学でもええよ?

 イングランドに3年くらい留学して、そ

 のままあっちで就職」

「だからっ。

 ホント俺の話聞かない奴だな…」


 “留学”でしかも“3年”って。

 留学するつもりなんて毛頭ないから知識

としては全然ないほうだろうけど、さすが

に3年も留学する生徒なんているんだろう

か?

 そもそも留学費用だってバカにならない

だろうと思うのに、クロードはものすごい

名案でもひらめいたかのような顔で更に何

か呟いている。

 高級ホテル暮らしより一戸建を買った方

が安いと言って家一軒まるっとお買い上げ

できちゃうクロードの金銭感覚にはとても

ついていけない。

 根っから庶民な俺としては、不景気だ不景

気だと言ってもあるところにはあるもんなん

だなと遠い目で思うだけだ。


「時間もったいないし、さっさと本探そう

 か?」


 一人で考え込んでるクロードなんかほっ

といて…と二人に話しかけたら、さすがに

呆れの域を通り越したのか加我には同情気

味に大変だなと肩を叩かれ高瀬には苦笑い

を浮かべられた。


「まぁ、仲がいいのはいいことじゃない

 か?

 別に害があるわけじゃないだろうし。

 クロードも慣れない日本で打ち解けられ

 たのは桐生のおかげだって言ってたし、

 もうちょっとだけ我慢してやれば?」


 いや、それが害はものすごくあるんだけ

ど…とはさすがに言い出せなかった。

 留学の件も傍から見れば仲のいい友達同

士の冗談に見えるかもしれないけど、クロ

ードのあれは本気だ。

 行動力のあるクロードが動き出す前に釘

刺しておかないとな、と思いながら苦笑い

を浮かべるしかなかった。





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あきゅろす。
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