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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


 カイルは暫く迷うようにカップを凝視し

ていたが、カップを手に取るとこちらから

隠すようにカップに口をつけた。

 それがやたらと長いので、一口目を待っ

ていた俺は横からそれを覗き込もうとし

た。


「カイルって…もしかして猫舌?」

「うっ…るさいなっ。こっち向くなっ」


 あれ、かわいい…。


 こう、なんというか…いじり甲斐のある

反応に、日頃からいじられてる俺としては

新鮮なものがある。


「ふーふーしてやろうか?」

「いらんわっ」


 よほど嫌だったのか俺の顎に掌を押し付

けてグイグイと押しやってくる。

 でも日頃から鉄面皮かと思うほど感情を

出さないカイルがそんなことをするのが新

鮮でたまらない。

 どこか異世界の空気でも吸ってるんじゃ

ないかと思ってたけど、こんな歳相応の表

情を垣間見ると印象がぐっと幼くなる。

 ただでさえ黒髪に黒目という日本人に近

い容姿だから、余計に親近感も増すという

もので…。


「カーイル」

「アツッ、どけ!邪魔だ!」


 一度は離れるように見せかけた俺がフェ

イントで腰に抱き着いたせいでカップが揺

れ、中身がカイルの指先にかかってしまう

と鬼のような形相でカイルがこちらを振り

返る。


「なんでいつも怒ってんだよ?

 俺はただ友達になりたいだけなのに」

「おまっ…疫病神がっ!

 お前となんて1秒たりとも一緒に居たく

 ないんだ!

 頭から茶かけられたくなかったら離れ

 ろ!!」


 一瞬本気の苛立ちが見えてカップを傾け

られそうな勢いを察し仕方なくカイルを解

放する。

 抱き着いた体はやっぱり冷え切ったまま

だった。


「…まぁすぐにでは無理でも仲良くなりた

 いと思ってるから。

 それは覚えておいて」

「お前と仲良くするつもりなんて毛の先ほ

 どもないっ」





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あきゅろす。
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