悪魔も喘ぐ夜
*
グイッ!
思いがけず後方へ体が引っ張られて驚
く。
バランスを崩しかけて振り返ると、そこ
には鋭い目でクロードを睨みつける麗がい
た。
「麗っ!家に入ってろって言っただろ!」
「お兄ちゃんに変なことしないでっ!
お兄ちゃんをどうこうしようなんてぼく
が許さない!!」
俺が焦って言うのも聞かずに、麗はクロ
ードとの間に強引に体を割り込ませてきた。
自分の身を盾にして、俺を玄関のほうへ
と押しやる。
「“お兄ちゃん”?…あぁ、弟か」
クロードはしばし考え込む素振りを見せ
ていたが、やがて思い当たったように目線
を上げた時にはもうその目は赤く光ってい
た。
「麗に妙なことするなよっ!」
その目を見て焦ったが、それをどうすれ
ば阻止できるのかその術を俺は知らない。
「そこ退いてんか。
駆は俺が預かるさかい」
クロードが一歩麗に詰め寄った。
「やだっ!!
お兄ちゃんはぼくが守る!!」
しかし麗のハッキリとした声が響き渡
った。
その視線の鋭さは弱まることなくクロ
ードを見据えていた。
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